【新宿のヒトサラ】Vol.03 ネクストブレイク芸人として注目のお笑いコンビ、オズワルドの伊藤俊介さん。歌舞伎町思い出の「ヒトサラ」は、飲みの締めに食べたい焼きそばです

文:オオバリエ
2021.10.25

M-1グランプリで2年連続決勝(2019&2020)に勝ち進み、第42回ABCお笑いグランプリでは見事優勝を果たすなど、勢いに乗っているオズワルド。ツッコミの伊藤さんは、芸人仲間と新宿区でシェアハウスをしている。「肌が合う」という理由から、新宿を基盤に生活をしている伊藤さんの大事にしたい「ヒトサラ」を紹介していただきました。

明るい飲み屋さんじゃないところで飲みたい何かがあるんですよね

— オズワルドさんは吉本興業に所属されているので、新宿へは頻繁に足を運ばれていると思います。

そうですね。この取材も「ルミネtheよしもと」の出番の合間だったので(歌舞伎町まで)歩いてきましたし、事務所も新宿にあるので、しょっちゅう来てますね。

— 千葉県出身ということで、学生時代から新宿には来られていたのではないかと思いますが、芸人になられてからとは印象が大きく違いますか?

芸人になってからというより、お酒が飲めるようになってからですかね。学生時代の新宿は、駅ビルで服を買って、みんなが知ってるようなお店でごはんを食べて帰る、みたいな感じでしたけど、お酒が飲めるようになって、どんどんディープなお店を知るようになると、ひと口に新宿って言ってもいろんな面があるんだなって思うようになりましたね。

— 例えば、どんな一面が思い浮かびますか?

簡単に言えば、怖い! でしょ。お店の中でお客さん同士が喧嘩してるとか。道で酔いつぶれて寝てる人がひとりやふたりじゃないとか(笑)。ただ、芸人になってからは、チェーン店の居酒屋さんよりも、とにかく安く飲ませてくれるお店とかに行くことが多くなったんですね。そういうところの方が安心だったりするんですよ。

— ディープなお店の方が?

なんていうんですかね、人間丸出しっていうか。しょっちゅう会うけど、あだ名以外のことはまったく知らないとか。

— 本名や仕事を知らない、ということですよね。

そう。知らないし、聞かない。ものすごくいいスーツ着てる人でも、そこではあだ名以外のことは知らない。向こうが話したければ聞くけど、こちらからは聞かないんですよね。お互いに変な踏み込み方をしないっていうか。下手な居酒屋さんで、“おい、お前オズワルドだろ~”って絡まれるようなことを考えたら、逆にお酒の飲み方のマナーがわかってるような気がしますね。歌舞伎町のめっちゃ安いお店って、イメージ的には酔っ払いがいて怖いって感じしますよね。

— そうですね。入っていいのか悩みます。

その一線を越えてくるわけだから、本当に安く飲みたいんですよ(笑)。

— そのディープな部分にいるという共感性とでもいうんでしょうか。

ですね。ディープといえど、飲み屋さんに入れるってことは働いてるわけで。明るい飲み屋さんじゃないところで飲みたい何かがあるんですよね。

— そこで逆に線引きしてるから、居やすいわけですね。

夜の商売をしてる人もいいスーツを着てるサラリーマンとおぼしき人も、みんな同じっていうのがいいんでしょうね。なんか、あったけーなって思うことが多いんですよ。吉本は渋谷にも「ヨシモト∞ホール」があるので、打ち上げで飲むことも多いですけど、僕は結局新宿に戻ってきちゃいます。

家でも真似して作るほど美味しかった24時間営業の焼きそば

— コロナ禍以前は、夜は新宿で過ごすことが多かったそうですね。

演芸おんせんの矢巻っていう、趣味が“歌舞伎町めぐり”っていうヤツがいるんです。そいつにいろんなところに連れて行ってもらいましたね。

— 芸人の方と一緒に過ごすことが多いですか?

舞台終わりで、飲みに行こうかっていう流れが多いですからね。コロナ禍になってからは、そういうのもなくなってしまいましたけど、その前は100%行ってました。

— どういう飲み方がお好きですか?

流れは決まってて。一軒目に居酒屋へ行って飲みながらちょこっと食べたら、二軒目からはバーに行くことが多いですね。食べるとおなかがいっぱいになっちゃうんで、ほぼ食べないんですよ。

— しっかり飲みたいんですね。

しっかり飲みたいんでしょうね(笑)。歌舞伎町でオススメのお店って言われたら、どこだろうなー。「長政」(博多とりかわ長政)が好きですね。やきとりはもちろんおいしいんですけど、ごぼうスティックが絶品なんです。あとは、締めで「かぶきち」に行くことが多かったですね。行った回数で言えば「かぶきち」がダントツですね。

— 「かぶきち」さんといえば歌舞伎町のど真ん中にある誰もが知ってる24時間営業の焼きそば専門店ですよね。

まさに、今言った通り「I♡歌舞伎町」の看板があるビルの隣にある誰もが知ってる24時間営業のお店です。ってことは、何時に行っても定番のものが食べられるわけですよね。チャーハンやとん平焼きや梅水晶なんてのもあるんで、ここで飲むこともできちゃう。って言っても、そんな広いお店じゃないから、長居するっていうよりはサクッと飲んで食べて出る方がいい雰囲気のお店ですけどね。

— 焼きそば専門店らしく、小・並・大の3種類がありますけど、お好みはどれですか?

しこたま飲んだあとなんで、ひとりで食べるなら小(サイズ)。大を頼んで、みんなで分けることもありましたね。麺が細めでもやしと豚肉が入ってて、ものすごく美味しいんです。ポイントは味の濃さ。飲み過ぎて舌がバカになってるんで、ちょうどいい(笑)。

— 生たまごを乗せて食べることで有名ですよね。

あ、そうそう。あれがうまいんですよねー。トレンディエンジェルのたかしさんの家に通ってる時期があったんですけど、濃いめの焼きそばを作って、最後に生たまごを乗せて出したら、みんな美味しいって言ってましたね。8人前ぐらいの焼きそばを菜箸一本で作って、腱鞘炎になるかと思いましたけど。

後輩芸人を美味しいところに連れて行ってあげたいという思いがある

— 芸人さんと一緒にシェアハウスされているのも新宿区なんですよね。

っていうか、新宿が近いことがいいなと思って家を探したんです。まずは、劇場に行きやすいっていうのもありますし、渋谷、大宮、東京駅までも楽ですしね。あとは、ベロベロになっても、すぐに帰れるっていうのもポイントです。

— シェアハウスでは、伊藤さんがごはんを作られることも多いとか。

別に食事担当ってわけじゃなくて、ひとりで食うのもつまんないんで、みんなに食べる?って聞いてるうちに、だんだん自分とイワクラ(蛙亭/シェアハウスをしている女性芸人)が作るようになってて。でも、結局みんなが揃うのって24時ぐらいなんですよね。そこから飯5合炊いて食ってたら、全員めちゃくちゃ太っちゃって。

— 幸せ太りですね(笑)。

でも、ABCお笑いグランプリで、相方の畠中にダイエット方法を勧めるネタをやろうと思ってたのに、俺が太ってたら話になんないなと思って、深夜のごはんをやめちゃったんです。

— ABCお笑いグランプリで、ファイナルステージに進んだネタ「ダイエット」に、そんな裏話があったなんて!

なので、最近はあんまり作ってないんですけど、誰かの誕生日や賞レースのお祝い事があれば作ったりしますね。あとは25日ですね。給料日なので、「伊藤ちゃん焼肉」っていって、みんなで焼肉を食います。

— すごいですね。大盤振る舞い。

いやいや、って言ったって、肉のハナマサとかですよ。ホットプレートで焼くだけの。ただ、量はすごいですけどね。

— これが得意だ、という料理はありますか?

牛すじの辛いスープですね。母ちゃんと妹が得意としてる、いわゆるおふくろの味なんです。これ、マジで金取れるぐらい旨いですよ。

— 牛すじってことは、かなり時間がかかりますよね。

牛すじを煮込んだお湯を一度捨てて、またお湯をつぎ足しながら煮込むんです。だいたい3時間ぐらいかな。そこに野菜と粉唐辛子、にんにくを入れて、さらにしょうがをちょこっと。ポイントはダシダですかね。

— 韓国の牛骨エキスですよね。日本のダシとは違う美味しさがありますよね。

ですよね。そこから数時間煮込むんで、全部で5時間ぐらいかかる。だから、休みとか早めに終わった日にしか作れないんですけどね。でも、作ったら旨いのはわかってるんで、たまーに作りたくなっちゃいますね。

— それは、お母さんから教わったんですか。

教わりましたよ。その通りに作ってるんですけど、完璧に母ちゃんの方が旨いんですよね。これが、なぜだか。

— お話を聞いていると、ごはんを作るのが好きなように思いますが、人に振る舞うのが好きなんですかね。

どうなんでしょう。イワクラが宮崎出身なので、チキン南蛮を作るのがうまいんですけど、それも好きだし、肥満(大鶴肥満/ママタルト・シェアハウスしている芸人)が作る“肥満ピザ”も楽しみですしね。

— もうひとりシェアハウスされている森本サイダーさんは作られないんですか。

一回、焼きそばを作ってくれたんですけど、なぜかびしょびしょで。なんなんだろう、あれ。ほんと、焼きそばがずぶ濡れだったんですよね。そんな濡れたもの食べるなら、自分で作ろうかなとは思いますね。

— 皆さんとワイワイ食べるのが好きなんですかね。

あー、それはしっくりきますね。基本、グルメなわけじゃないので、ひとりで食べるなら、お腹が満たされればいいんですよ。こんなに外では飲んだくれてますけど、家でひとりだとほとんど飲みませんからね。ただ、後輩芸人を連れていくなら、美味しいところに連れて行ってあげたいという思いがあるんで、そのためにいろんなお店を知っておきたいなと思うんですよね。

— いつか連れて行く日のために、美味しいお店にも足を運んでおく。

そうですね。自分が地方に行ったときに、どこが美味しいかわからないときとか、先輩の芸人さんが教えてくれるわけじゃないですか。自分も、そういうふうに教えてあげたいし、一緒に食べたら楽しいと思うんですよ。

※ライブで出演経験のあるライブハウス入り口で。

— 最後に新宿での過ごし方を教えてもらえたらと思います。ライブの合間は、数時間空くことも多いと思いますが、どのように過ごされているんですか?

今は、ほぼネタ合わせに使ってますね。ありがたいことに、がっつり数時間空くことがなくなってきてるもので、合間の時間はすごく貴重なんです。

— 楽屋で過ごしてるんですか?

いえ、楽屋だと兄さんたちがいるので、邪魔にならないように出て、喫茶店とか行きますね。喫茶「タイムズ」がいちばん落ち着くかな。っていうか、ほぼそこにいると言ってもいい。

— ネタ合わせがないときは、外に出ることもありますか?

そうですね。もちろん、飯を食いに行くこともありますけど……最近は買い物もその時間でむりくり行ったりします。ここまで飲みに行く話とかしましたけど、コロナ禍になってからはまったくと言っていいほど行けてないですからね。20時までに仕事が終わることなんてほぼないんで。だから、服を買うのがすごくストレス解消になってたりもします。

— 駅ビルで買われるんですか?

LUMINEももちろんですけど、ガーッと伊勢丹まで行ったり、目的を決めて路面店も行きますよ。

— そういう意味でも、新宿はとっても便利ですね。

そうですね。いろんな人がいるじゃないですか。ひと口におしゃれな人って言っても、伊勢丹周りのハイブランドな人もいれば、ファッションの勉強してる学生さんみたいな面白い格好してる人もいるし。お笑い好きな人やライブハウス、映画館というエンターテインメントも盛り上がってますしね。なんかそういう雑多でディープな感じが肌に合うんですよね。

— 伊藤さんは、芸人としての目標を公言されていますよね。

M-1優勝と「(人志松本の)すべらない話」に出演することですね。そして、売れに売れたい。

— 売れに売れても新宿の近くで暮らしたいなと思われますか?

矢巻(演芸おんせん)と木場(大仰天)の3人で歌舞伎町に店を出したいねって話をしてたんですよ。

— え、お店ですか!?

そう。大阪って、芸人だからってサービスしてくれるお店が多いんですよ。東京もサービスしてくれよ、って話じゃなくて、そういう気持ちがうれしいじゃないですか。食べれないときに食べさせてくれるって、死ぬほど感謝するんですよ。だから、そういう芸人が来やすい店を出したいなと思ってたんですよね。

— 具体的に進められていたんですか?

ちょうど本格的に進めようか、みたいなタイミングでコロナ禍になってしまって。外出もままならない状態になっちゃうタイミングで出店しなくてよかったよなーって話にはなったんですけど、やっぱりいつかはやりたいって気持ちはありますね。

— やっぱり伊藤さんは人が集まる場所を作りたいんですね。

まぁ、その方が楽しいだろって考え方ですよね。自分が先輩や、食べさせてくれたお店の人たちから受け継いだ気持ちを返せる場所になればいいなとも思いますし、そこで芸人が働けたりしたら、なおさらいいでしょうしね。

— M-1の賞金でお店を出したり、とか?

お! そうですよね。M-1で優勝したら、その賞金で出せますね。いいっすね。そうしましょう。

— そのお店は新宿なんですよね。

ですね。歌舞伎町でしょうね。っていうか、それ以外は考えられないですね。ディープで人生の面白さを知ってる人たちの集まりなんで。って、最高級のいい言葉でまとめてますけど。

— いい言葉で言わないと?

どうしようもない人たちです。俺も含めてですけど(笑)。でも、そこが歌舞伎町の魅力だと思いますよ。

オズワルド 伊藤俊介(写真右)

NSC東京校17期の同期だった畠中悠と2014年11月にオズワルドを結成。「M-1グランプリ2019」「M-1グランプリ2020」と2年連続決勝進出を果たし、ABC「第42回お笑いグランプリ」で見事優勝を果たす。YouTubeチャンネル「オズワルドのおずWORLD」にて「オズワルドのニューラジオ0」を展開中。
〈レギュラーラジオ〉
TBSラジオ「ほら!ここがオズワルドさんち!」(毎週金曜24:30~25:00)
MBSラジオ「エビ中☆なんやねん」(毎週金曜25:00~25:30)
LuckyFM茨城放送「MUSIC COUNTDOWN 10&10」(毎週日曜15:00~17:00)

オズワルドオフィシャルサイト
伊藤さんTwitter
畠中さんTwitter
YouTube「オズワルドのおずWORLD」

【新宿のヒトサラ】Vol.03 ネクストブレイク芸人として注目のお笑いコンビ、オズワルドの伊藤俊介さん。歌舞伎町思い出の「ヒトサラ」は、飲みの締めに食べたい焼きそばです

text:オオバリエ
photo:加藤千絵(CAPS)

この記事をシェア

OTHER ARTICLE他の記事