そうめん研究家・ソーメン二郎と声優・鈴村健一のそうめん対談<後編>~そうめんの明日はどっちだ!~

文:Captain&Me
2022.01.07

「そうめん研究家」として、日々そうめんの復権・普及活動にいそしむ男、ソーメン二郎。かたや、その美声でファンを魅了し続ける人気声優、鈴村健一。そんなふたりを結び付けたのは“そうめんへの熱すぎる愛”だった。「20代の下積み時代はよく新宿で呑んでました」と語る鈴村さんをソーメン二郎さんが週一でそうめんを提供している新宿・ゴールデン街の老舗『奥亭』に招いて、大好きなそうめんへの想いをあますことなく語り合っていただいた前編。続く後編では「そうめんのこれから」についてふたりが熱のこもったトークを展開。そして、ソーメン二郎さん特製のオリジナルそうめんを鈴村さんが堪能しました。

そうめんが繋いだ縁

— おふたりが出会ったきっかけは?

鈴村:僕が出演していたTOKYO FMの『ONE MORNING』という番組に二郎さんがゲストで来て下さったのが最初です。僕が食べる事が好きだって番組内で言っていたので、スタッフさんが「きっと好きな感じの人が来ると思います」って呼んでくださったのがソーメン二郎さんだったんです。こんな方がいるんだって、衝撃の出会いでしたね。

二郎:出演させていただいたら、半田そうめん、島原そうめん、白石温麺などなど、僕が喋ること全部ご存知なんですよ。番組でも言いましたけど、こんなに全国のそうめんをよく知っている人に僕は会ったことがなかったです。嬉しかったなあ。その後、メールをさせて頂いたり、「じゃあ、そうめん送りますね」って、いろいろ差し上げて食べていただいたり、今年の10月にはラジオ大阪の配信イベントをやらせていただいたり。なんだかんだと間を空けずにお会いできてる感じがあって、ご縁だなと思います。そうめんって縁起物なんですね。切らずに延ばして延ばして作ってあるので、「ご縁が切れませんように」ってお渡しするのがお中元なんです。そうめんは白い糸のようですけど、実は赤い糸ですよって話をすると、ちょっと僕がイイ人に見えますかね(笑)。

鈴村:ロマンティストに見えますね(笑)。

— ソーメン二郎さんに出会ってから、普段と違うそうめんの食べ方って増えましたか?

鈴村:もともと、そうめんはつゆで食べるって思い込んでるところがあって。でも、つゆに何かをプラスするとかはやってましたね。桃屋の『穂先メンマ やわらぎ』を入れて雰囲気変えて食べるとかは好きでよくやってました。でも、ソーメン二郎さんにお会いして、お酢なんかをかけてシンプルに食べてもおいしいですよって話をお聞きして家でやってみたんですよ。そうしたらそれが実際においしくて。それで、そういう感じで食べれる方法はないかなと思ってたら、ちょうど福岡に行った時に買ってきた「明太子の油漬け」があったんです。最初はこれをそうめんに繋げようって意識は全くなかったんですけど、「待てよ、こいつあるな」と思ってそうめんに乗せてみたら衝撃、すごい食べ物になったんですよ。それ以来、いろんなものを合わせてみようって感じになってます。とはいえ、やっぱり伝統の食べ方が一番好きだったりもします。

— 薬味にこだわりはありますか?

鈴村:さっき言ったメンマだったりいろいろ合わせますけど、なんやかんやでわさびが好きですね。鮫皮でおろしてみたり、ちょっといいわさび使ってみたりしますね。

二郎:そうめんはわさび派としょうが派で分かれますよね。6:4でしょうがの人が多いっていう統計もありますけど、わさびの人も実は多い。つゆもあごだしだったり、昆布だしだったり、地方によって違いますよね。

鈴村:僕は昆布だしが好きかな。

二郎:僕なんかは奈良県で山の人間なので、だしっていうと椎茸のだしなんですよ。それが家庭の味というか。だから、そうじゃない食べ方を知らなかったんです。みんなそうやって食べてるもんだと思ってて、東京に出てきたら三輪そうめんも知らないし、辛い醤油のめんつゆで食べてるし…。

鈴村:でも考えてみれば、昔はめんつゆとかそういうものって、母親が自分で作ってましたね。スーパーでめんつゆが売られるようになった時、うちの母親は「ごめんね」って買ってた気がする。「手を抜いてごめんね」って。母親は料理の仕事をしてたのでかなり料理にはこだわりがあって、例えばおでんを作るのに鍋を4つぐらい使うんですよ。このタネは別にしてこの鍋で茹でて、じゃがいもは煮崩れないように火加減調整しながら別の鍋で煮て、全部面取りして崩れないように入れる順番も工夫して。うちの母親はすごいことやってたんだなって大人になってから気づきましたね。おいしいもの食べさせてもらってたんだって感謝してます。だからこそ、出来合いのめんつゆを買うのに気が引けたのかも。

二郎:良い悪いは置いておいて、めんつゆが出てきたころから、そうめんは手抜き料理になりがちなんですよ。そうめん=手抜き料理っていうイメージしかない人は嫌なものになってしまう可能性ありますよね…。

令和な時代のそうめんの楽しみ方

— これからのそうめんはどうなっていくのでしょう?

鈴村:そうめんは新しいレシピもそうなんですけど、作る過程が楽しいと思ってますね。下手だからこそ面白いというか、茹でた後の締め加減によって違いがあったりして、仕上がりがいまだにバラバラなんですよ。夫婦で食べて「今日はメチャクチャ上手に茹でられたね」って言い合ったりするのが楽しくて。「今日はこんな感じ」ってラフに楽しめる、クオリティが一定じゃないことを楽しめる感じが僕は気に入ってます。そうめんの種類を変えてみて、「半田そうめんって茹でるの時間かかるのね」とか言いながら待ってる時間も尊かったり、そういう楽しみ方をしているんですよね。

二郎:簡単な料理なので、子どもでも料理をしない人でも作れる。お湯を沸かしてそうめんを茹でて、あとは薬味を切るぐらい。シンプルで誰でも作れる料理だけど、麺が変わると味が違う、つゆもバリエーション豊富。薬味もツナ缶を入れてみるとか、ちょっとナンプラーとレモン入れてみるとか、いくらでもアレンジできて。簡単だけど組み合わせが無限大っていうのも楽しいですよね。

鈴村:考えてみると、うちの母親は結構バリエーションをつけてそうめんを食卓に出してくれてましたね。なかでも、すごく簡単に作ってたのが朝食のそうめん。冬場に釜揚げみたいにして出てくるんですけど、温かいつゆで食べたり、茶碗に取って醤油と鰹節をかけて食べるとか、めちゃくちゃおいしいんですよ。それで、ある日「もっとおいしい食べ方ある」って気付いたのが納豆でしたね。こういう風にアイデア次第で誰でもおいしく食べられる。そこにそうめんの活路がある気がします。

でも、外食としてのそうめんもアリだと思っていて、二郎さんに紹介していただいた、恵比寿の『そうめん そそそ』さんにも行ってみたんですよ。普通のそうめんもあるんですけど、折角だからちょっと違うのを食べようと思って「ふわふわ釜玉」っていうのを注文してみたんです。「釜玉風のそうめんかな?」と思ってたら、出てきたのがメレンゲに埋め尽くされたそうめん。混ぜて食べたら間違いなくそうめんなんですけどふわふわで…、あれはすごい体験でした。こういう方向性もあるんだって感心しました。そうめんを家で食べないならどう食べるっていう事をちゃんとクリエイトしてる感じが激アツでしたね。

二郎:外食文化のレシピなんですよね。家庭料理とは別物で、だから1,000円ぐらい取るっていう。そこは努力ですよね。

鈴村:家で食べるんだったら、これまで通りシンプルでもいいんじゃないかと思いつつ、そうじゃない食べ方もあるんだっていうことを知れたいい体験でした。結婚前は外食の方が多かったんですが、いまは家で食べるのがすごくいいなと思ってて。なんでもない料理でも家で食べるととんでもなくおいしいなって思うんですけど、その分、外食するっていう楽しさが昔よりもアップした気がしてて、「外食は家で作れないものを食べに行く」っていう想いがめちゃくちゃ強くなったんですよ。そういった形にそうめんがハマってくれればもっとバズる気がします。

僕が子どもの頃はラーメンがそんな感じだったんですよ。ラーメンは家で食べるもので、給食がない土曜日のお昼に吉本新喜劇を見ながら食べるっていうものだったんです。当時はラーメン屋ってチェーン店しかなかったし、今ほど特別なものじゃなかった。当たり前にあるものというか、家で食べるものだったんです。でも、今はラーメンって一つの文化になってますよね。そうめんもそうなればいいなってすごく思います。「この作り込まれたラーメンは家じゃ食べれない」が、そうめんにも起きる可能性があると思ってます。

二郎:そこまで考えてくれている人はいないですよ。嬉しいです。そうなってくると、カギを握るのはレシピかもしれないですね。家庭のレシピと外食のレシピ。あとは外国の方にどうやって伝えていくかみたいなことが、コロナ明けからあるかもしれないですね。あとは、お中元文化に変わる形。僕がやりたいと思ってるのは、“締めそうめん”の文化。お酒を呑んだ最後に、冬でも冷たいそうめんをさっと食べて、さっぱり締めて帰るみたいな。

鈴村:最高ですね!

二郎:10年後は、呑んだ後の「締めて帰るか」が、「そうめん食べて帰るか」っていう意味になってるとかね。

鈴村:なってほしい(笑)。30代ぐらいまでは締めにラーメン食べたくなるんですよ。「帰ろう」ってお店出てるのにラーメン屋さんに寄っちゃって食べちゃって、ついついもう一杯呑んじゃうんですよね(笑)。その頃はまだラーメンいけてたんですけど、いまはちょっと重くて…。そうなると、“締めそうめん”はマジで助かります。だって、どうしても麺類食べたいんですもん(笑)。

二郎:そうなんですよね(笑)。だから僕は駅の立ち食い蕎麦屋さんと同じように、締めそうめんをワンコインで食べれるお店をやるのが最後の仕事だと思ってるぐらいです。

鈴村:やってほしい。期待してます!

珠玉のそうめんを、いざ、実食!

ここからは鈴村さんも思わず完食した、ソーメン二郎さん特製のオリジナルそうめんをご紹介。

<一杯目>「カレー煮干し煮麺」

二郎:そうめんは非常に細い、長崎の島原そうめんです。『ラーメン凪』(ゴールデン街発祥の煮干しラーメンの名店)さんにお願いして仕入れさせてもらった煮干しスープをカレー風味に仕上げてあります。トッピングの煮干しも凪さんと同じものです。そこに山椒を加えて、食用菊で彩りを足しています。煮干しが強すぎず、カレーも強すぎず、飲み干せるぐらいの味にしています。途中、お好みでレモンとナンプラーとお酢の合わせ調味料で味変していただくこともできます。

鈴村:ほのかにカレーを感じて、ものすごくおいしいです。カレーってスパイシーになりがちですが、これはちょっと違いますね。確実にカレーを感じるんですけど、スパイシーがそこまで前面に出てない。カレーって主張が強いですけど、この一杯は「こんにちは、ボクもいます」ぐらい、結構後ろにいるんですよ。だからこそなのか、そうめんと相性がすごくいいです。そして、味変の調味料を入れてみると、カレー君がより後ろに下がるんですけど、調味料と肩組んでる感じの味になります(笑)。

<二杯目>「肉味噌椎茸そうめん」

二郎:そうめんは先ほどと同じ島原そうめんです。今度は椎茸のだしで冷たく仕立てました。トッピングは椎茸と釜揚げした桜エビ、肉味噌です。脇の方に柚子胡椒を添えてありますので、お好みのタイミングでつゆに溶かして味変してみてください。椎茸だしはストレートなのですが、隠し味に蜂蜜が入っていて割とさっぱりしてると思います。宮崎県都城市のヤマエ食品さんの「高千穂峡つゆ しいたけ味」と肉味噌を使っています。

鈴村:あまりに絶妙な味のバランスに言葉を無くしました。全体としては和の雰囲気なんですが、先ほどのカレー味の一杯よりも肉味噌のおかげで味に力強いタッチがあって、そのギャップにやられましたね。釜揚げした桜エビの食感も良くて、そのソフトな甘みが椎茸だしと肉味噌のアクセントを上手く繋いでくれています。そして、少しずつ溶けてきた柚子胡椒がいい仕事をしてます。椎茸だしに感じていた甘味に複雑なグラデーションを与えてくれて、最後の一滴まで飽きさせませんでした。

ソーメン二郎(そうめんじろう)

そうめん研究家。奈良県・桜井市生まれ。メディアを通じてそうめん普及活動を行う。著者にそうめんレシピ本『ラク旨!無限そうめんレシピ』(扶桑社ムック)、そうめん絵本『そうめんソータロー』(ポプラ社 岡田やすたか作 ソーメン二郎企画・原案)がある。義理姉夫婦が「三輪そうめん植田製麺所」を奈良県桜井市で経営する。

そうめんBAR

ソーメン二郎の「そうめんBAR」は、毎週日曜日(13時〜18時)、月曜日(19時〜23時)に新宿歌舞伎町ゴールデン街(1番街「奥亭」)で営業中。営業日・営業時間に変更がある場合がありますのでツイッター@somenjiroをご確認下さい。

鈴村健一(すずむらけんいち)

声優、ナレーター、アーティスト。大阪府生まれ。1994年、TVアニメ『マクロス7』モーリー役でデビュー。主な代表作に『銀魂』(沖田総悟)、『銀河英雄伝説 Die Neue These』(ヤン・ウェンリー)、『鬼滅の刃』(伊黒小芭内)など。2021年11月24日には7年半ぶりのフルアルバム『ぶらいと』をリリース。

鈴村健一 LIVE TOUR 2022 “ぶらいと”

11月24日発売の4th Album「ぶらいと」を引っ下げた、約5年ぶりとなるライブツアーの開催が決定。

<大阪公演> Zepp Namba
2022年2月5日(土) 17:00開場 / 18:00開演
2022年2月6日(日) 16:00開場 / 17:00開演

<愛知公演> Zepp Nagoya
2022年2月20日(日) 17:00開場 / 18:00開演

<神奈川公演> KT Zepp Yokohama
2022年2月26日(土) 17:00開場 / 18:00開演

そうめん研究家・ソーメン二郎と声優・鈴村健一のそうめん対談<後編>~そうめんの明日はどっちだ!~

text:Captain&Me
photo:落合由夏

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