【Interview】Vol.9 GEZANマヒトからたった一人の「あなた」へ。 コロナ禍の中、いま言葉で伝えたいこと

文:佐々木ののか
2020.09.08

――フェスも祭りもない浮かない夏を過ごす人たちに、少しでも元気になってもらいたい。

そんな想いでMASH UP! KABUKICHOでは、GEZANマヒトから直筆お手紙が届くプレゼントキャンペーンを企画した。(※応募はすでに終了)

コロナ禍においても、ドキュメンタリー「#WASH」「#WiSH」の制作や、恵比寿のライブハウス・LIQUIDROOM屋上に農園をつくるとともに、自主隔離期間に自宅でできる家庭菜園の種や苗を投げ銭にて販売する「全感覚菜(ぜんかんかくさい)」、映画「破壊の日」への出演など、次なる一手を打ち続けているマヒトゥ・ザ・ピーポーも、この期間に孤独や虚無が輪郭を得たと話す。

孤独を抱えて生活する人々への手紙に、どんな想いを込めたのか。彼が放った言葉はきっと、明日のあなたのお守りになる。

――コロナ禍の中で、マヒトさんはどんなことを感じながら生活していましたか?

いわゆる自粛期間はずっと家にいて、自分の生活能力の低さを痛感しました。普段は友達と遊んでいるうちにご飯が済まされていることが多かったけど、家にいると自分でどうにかしないといけない。

あとは、ひとりは寂しいってことは本当に実感しましたね。外出せずに家にいる人でも、パートナーや家族と一緒に住んでいる人と、ひとりで家にいる人は違うだろうなって。「全感覚菜(ぜんかんかくさい)」というフェスをやってるんですけど、チームでZoomミーティングしてても、元気がないやつはもれなくひとり暮らしだったし。

自分が何を大事にしてて、何に幸せを感じるかへの解像度が上がった一方で、孤独も輪郭を得ちゃった。東京の一番良いところって、光や音の渦の中でいろんなものをごまかす力だと思うんだけど、それが奪われたから孤独や虚無みたいなものがはっきりしてしまった人は多いと思う。

――そうした孤独を抱えた方も、マヒトさん直筆のお手紙で元気になっていただけたらいいなと思っています。改めて、今回お手紙を書いてみて、感じたことはありますか?

手紙って面白いなと思って。筆跡鑑定なんてものがあるくらい、手書きの文字にはパーソナルな温度が乗る。スピリチュアルな言い方をすれば、言霊と呼んでもいい。パソコンやスマホで打ち込んだ文字では失われてしまう何かが手紙には残りますよね。メールやLINEはけっこう削除しちゃうんですけど、手紙はなかなか捨てられなくて。

最近たまたま部屋を掃除してたら、昔の彼女にもらった手紙が出てきたんですけど、読み返すたびに自分との関係の変化を意識させられるというか。視点がズレることで、手紙の純度が低くなっていくのを感じながら、当時のことを思い出して落ち込む、みたいな(笑)。手紙にはその人がそこに触れた時間があったわけで、だから捨てられないのかもしれないですね。

――通常の手紙は特定の相手を想って書きますが、今回はどなたが受け取るかわからない手紙ですよね。どんな想いを込めて書いてくださっていますか?

スマホがない時代に、瓶に詰めて海に流すロマンチックな手紙ってあったじゃないですか。自分に不意に届いたら「あぁ」と思うような、そんな感覚で書いてるかもしれない。

当選された方、お楽しみに!

――マヒトさんからの手紙は受け取った方にとって「お守り」になるかと思います。マヒトさんにとってのお守りとはどんなものでしょう?

最近は「赤」がお守りかもしれない。自転車で外を走ってても、郵便ポストを見ると「おいっす」って手を挙げたくなるくらい(笑)。

でも、お守りなんてなんでもいいと思うんですよね。俺も昔から赤が好きでしたけど、なんでって聞かれてもわからないし。これっていうものがなくても「これがお守りなんだ」って自分で決め込んじゃえば、安心する場所を増やせるんじゃないかな。

――環境が目まぐるしく変わる中で、不安な日々を過ごしている方も多いかと思います。そうした方々に「こんな風に過ごしていてほしい」といった想いはありますか?

今ある環境や持っているものを、光と呼べる状態にあってほしいなとは思いますね。

たとえば、完璧主義な人が98点を取って「自分は不幸だ」と思ったとしても、0点ベースで物事をとらえる人からすると、20点取れれば高得点だと思える。98点の人のほうが持っているものは多いかもしれないけど、その人が幸せかどうかは全然関係ない。

自分が持っているものをどう扱うかっていうのは、生きていくうえで必要なテクニックになるんじゃないかなって思ってます。

いろんなものを積み上げても最後は死ぬから意味がないと思うか、明日が来るから希望があると思うかだったら、自分はできれば後者でありたい。なかなか難しいところもあるんですけど。

――でも、どんな状況にあっても、次々と新しいものを生み出し続けているマヒトさんは、やはり“希望の人”だと感じます。その生きるエネルギーはどこから来るのでしょうか。

さっき言ったこととズレているようだけど、絶望みたいな気持ちはずっとあって。それを壊してくれる人や場所、環境に少しでも居合わせたい焦燥感にも近い気持ちが、生きる活力につながっているのかもしれない。

何かが面白くなる可能性が少しでもあるなら走り続けたい。自分の生を問われたとき、やってきたことの引き出しを全部開けたら勝ちでしょって感じがするから。

いつも私たちの想像をはるかに超える未来を見せてくれる、GEZAN・マヒト。その熱量の大きさは、死や絶望に対する究極のカウンターなのかもしれない。

孤独のままで、互いの境界を侵すことはない。

同じ風を感じながらも、必ずしも同じ方向を向いているわけではない。

しかし、“私”と“私”はひとりではないということを、彼の歌が、言葉が、背中が教えてくれる。

マヒトゥ・ザ・ピーポー

2009年 バンドGEZANを大阪にて結成。作詞作曲をおこないボーカルとして音楽活動開始。
うたを軸にしたソロでの活動の他に、青葉市子とのNUUAMMとして複数枚アルバムを制作。
近年では寺尾紗穂のアルバムに参加するなど、コラボレーションも多岐にわたり、映画の劇伴やCM音楽も多く手がける。また音楽以外の分野では国内外のアーティストを自身のレーベル十三月でリリースしたり、ものの価値を再考する野外フェス、全感覚祭を主催。また中国の写真家Ren Hangのモデルをつとめたりと、独自のレイヤーで時代をまたぎ、自由なスタンスでカルチャーをつくっている。2019年2月に3rd album 不完全なけものを、4月に4th album やさしい哺乳類が連続してリリースされ、5月にはじめての小説、銀河で一番静かな革命を出版。6月にはGEZANのドキュメンタリー映画 Tribe Called DiscordがSPACE SHOWER FILM配給で全国上映開始。バンドとしてはFUJI ROCK FESTIVALのWHITE STAGEに出演。

【Interview】Vol.9 GEZANマヒトからたった一人の「あなた」へ。 コロナ禍の中、いま言葉で伝えたいこと

Text:佐々木ののか
Photo:村上征斗

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