【Interview】Vol.14 SUPER BEAVER 渋谷龍太 新宿・歌舞伎町で生まれ育った男、SUPER BEAVERの渋谷龍太に聞く街への関わりと深い愛。

文:荒金良介
2021.02.02

昨年12月8、9日に横浜アリーナにて無観客生配信ライブを決行した人気ロック・バンド、SUPER BEAVER。その2日目の公演はオフィシャルYouTubeで無料配信され、同時視聴数約7万人(!)、アーカイブ無し1時間の生配信中に累計36万回視聴された。そのフロントマンである渋谷龍太(Vo)は、新宿・歌舞伎町で生まれ育った男であり、もちろん今もその場所に住み続けている。今回は新宿を内側から見続けてきた“地元民”という視点から、歌舞伎町の原風景や移り変わり、エピソードなどを音楽シーンの情勢を絡めて話を聞いてきた。
バンドとしては2021年2月3日にメジャー再契約アルバム『アイラヴユー』のリリースを控えたタイミングということで、「本当にマスターピースができた」と本人が語る自信作についても触れている。とにかく、新宿や歌舞伎町に対する深い愛に貫かれた渋谷の貴重な発言はここでしか読めないテキストといえるだろう。

歌舞伎町に来ると、安心しますね。 家に帰って来たという思いが強いから

- 渋谷さんは歌舞伎町生まれで、ずっと新宿で育ってきたわけですよね。物心ついた頃の記憶というと?

ずっと歌舞伎町だったり、新宿6、7丁目にいたので、その辺の街の記憶はありますね。このビル(東京都健康プラザハイジアにて取材)にも馴染みがあって、隣には婆ちゃんが入院していた大久保病院があるし、ハイジアビルの下にあったジーンズメイトにもよく買い物に行ってました。歌舞伎町に来ると、安心しますね。 家に帰って来たという思いが強いから。

- そんな渋谷少年はどんな遊びをしてました?

特別グレていたわけでもないから、地元の友達と普通に遊んでました。当時は治安も良くなかったので(笑)、深いところでは遊んでないけど、ボウリング、カラオケとか、そういうところに行ってました。学生時代に遊ぶといったら、それぐらいですからね。それが中学生ぐらいかな。

- ちなみに小学生の頃は?

歌舞伎町というよりも、戸山公園の方で遊んでました。チャリンコで行って、外で遊ぶことが多かったですね。

- 新宿ミラノ座に映画をよく観に行っていたそうですね?

両親と一緒に小学2年生の頃から行ってました。新宿ピカデリーもキレイになる前から観に行ってましたからね。

『ジュラシック・パーク』は最初の30分でジュースをこぼして、母ちゃんが怒ったことを覚えてます(笑)

- もともと両親が映画好きだったんですか?

そうですね、毎週観に行ってました。混む前の朝イチの時間帯に家族3人で行って、昼飯を食って帰って来るみたいな。大体、両親が観たい映画を観てました。『スピード』が印象に残ってますね。あと、『ジュラシック・パーク』は最初の30分でジュースをこぼして、母ちゃんが怒ったことを覚えてます(笑)。

- 新宿のライブハウスに出かけるようになったのは高校生の頃ですか?

高校2年で初めて新宿LOFTに行って、そこでLOSTAGEを観ました。当時はまだバンドをやってなかったので、すげえなと思いましたね。あと、新大久保のEARTHDOMにIdol Punch、COLORED RICE MENを観に行ってました。

- 当時からインディーズロック/パンクが好きだったんですね。

そうですね。小滝橋通りにレコード屋があった頃は、そこでしか買えないものがあったから。今は少なくなったけど、レコードを深く掘るにはいい店がたくさんありましたからね。あと、新宿にはディスクユニオンがたくさんあるので、パンクマーケットにもよく行ってました。

- SUPER BEAVERとして新宿で初めてライブをやったのはいつ頃ですか?

19歳かな。それも新宿LOFTですね。新宿LOFTのあるタテハナビルはお水の匂いのするビルで、楽屋もそういう匂いがしたから、最初は大丈夫かなって(笑)。

新宿で一人暮らししているときは(新宿LOFT)BARスペースに飲みに行ってました

- 地元のライブハウスでライブをやる気分とはまた違います?

テンションは上がるんですよね。新宿LOFTは聖地だったし、ライブハウスとして魅力があるから。新宿で一人暮らししているときは(新宿LOFT)BARスペースに飲みに行ってました。今ほど行きつけの飲み屋もなかったし、地元だし、歩いて帰れるし、場所も大好きでしたからね。

- LOFT以外で新宿でライブを行った場所というと?

ACB HALLは観に行ったことはあるけど、出たことはないんですよ。新宿で出たことがあるのはレッドクロス、Marble、MARZ……ANTINOCKは出たことがなくて。ほかにJAM、Nine Spicesもないんですよね。

ライブハウスは厳格な場所というイメージを持っているから

- へぇー! 意外と出演していないライブハウスもあるんですね。

スタッフさんを含めて新宿LOFTは密に仲良くしていたので、新宿でやるときはLOFTと思っちゃってましたね。

- 思い出に残っているライブというと?

bachoと2マン、Scoobie Doと2マン、あと、石崎ひゅーいさんの前身バンド・astrcoastと一緒にライブをやって、それ以降、ひゅーいさんとは親交がありますからね。MOROHAとの2マンも新宿LOFTで毎年2月14日にやっているから。新宿LOFTは気持ちが入りますね、ハコが持っている力を感じるので。

- 当時の音楽シーンについてはどんな印象を抱いてました?

シーンにそんなに興味を持ったことがなくて。フェスもたくさんなかったし……当時はまだ細分化されてなかったので、ライブハウスへの気持ちが強くて。最近はフェスに出ることが目標という若いバンドもいるけど、それはちょっとわからなくて。新宿LOFTでライブをやっていた頃はライブハウスの力がもっと強かったし、いまだに僕はそういう目でライブハウスを見てますね。あるライブハウスはオーディションライブがあったりして……ライブハウスは厳格な場所というイメージを持っているから。あと、今ほどアイドル文化も少なかったですよね。カラーは変わってきたのかなと。

ヘンにかっこつけてないんですよ、新宿って。街として等身大な感じがする

- では、渋谷さんが思う歌舞伎町のいいところは?

全部ちょうどいいと思ってます、年齢も落とすお金も(笑)。渋谷は年齢層が若いし、六本木や西麻布は高いし、新宿はちょうどいい気がして。街として品があるとは思わないけど、相対的に見たときに、どの街よりも下品ではないと思ってます。人間臭いし、すごく好きですね。歌舞伎町の何を知ってるというわけではないし、ただ生まれて、ただ住んでるだけの印象ですけど、気取ってないから好きですね。

ヘンにかっこつけてないんですよ、新宿って。街として等身大な感じがする。いろんな人がこの街を変えていこうという気持ちもわかるし、新宿の移り変わりは見てきたから。伊勢丹があんな風になるとは思わなかったし……庶民的なデパートでしたからね。街の至る所を見ても、歌舞伎町は様変わりしているし、コマ劇(新宿コマ劇場)跡地の辺りなんて全然違う!って今でも思いますからね。年齢に応じて遊ぶ場所も変わってきて、ゴールデン街にも行きますからね。

- 新宿ゴールデン街にも飲みに行くんですね?

しょっちゅう行きます。年齢層が広いのも僕は好きなところですね。新宿末廣亭にもずっと行っているんですけど、若い人もそうじゃない人も楽しめる場所がたくさんあるから。切り取る場所によって表情は全然違いますからね。

この街がもともと持っている空気は拭えないんだろうなと

- 確かに。歌舞伎町の変わないところ、変わったところを挙げるなら?

コマ劇跡地の辺りは昔とかなり印象は違うけど、道一本入ったら歌舞伎町だし、新宿遊歩道(公園)の辺りは全然変わってないですからね。新宿・歌舞伎町全体としてはダークなイメージから逸脱しよう、としてる感じはありますよね。親しみやすい街に変わろうとしている部分と、道一本入るとドロップしている部分も感じるし、それはそれで嫌いじゃないですね(笑)。ずっと住んでいるから思うことかもしれないけど、この街がもともと持っている空気は拭えないんだろうなと。昔、新宿LOFTで公演を打ったときに、お客さんが行きづらいと言ってたんですよ。でもそういう人たちからすると、大きな新宿東宝ビルがあったり、コマ劇跡地の辺りはすごくキレイになったので、通ることに抵抗がなくなってきたので、いろんな人が入りやすくなってますからね。それは素敵なことだなと。

- 新宿・歌舞伎町の変化に対しては、何か思うことはあります?

変わっていくことに抵抗はないですね。どんどん素敵な街になればいいなと。新宿は嫌いっていう人も多くて……何でですかね? まあ、そういう印象はあるんだろうけど、そこが魅力の一つだから。難しいですね。どうあろうと、この街が好きですね。

- 新宿で生まれて育ったミュージシャンはあまり多くないと思うので、渋谷さんのコメントはとても興味深いですよ。

生まれも育ちも新宿って、僕もあまり聞いたことがないですね。新宿は子供がそもそも少なくて、僕が小学生の頃も1クラスしかなかったから。たまたま新宿で生まれただけだけど……新宿生まれというのはこれからも言っていきたいですね。

- ちょっとベタな質問になりますが、渋谷さんにとって新宿・歌舞伎町とは?

気の利いたことは言えないけど、ただの地元です。こういう風に言える人間もいないだろうから、ははははは。

- 徒歩圏内にライブハウスがあるのは羨ましい限りです。

新宿末廣亭、新宿LOFTも歩いて同じ距離にあって、映画館もめちゃくちゃ多いですからね。いいカルチャーがギュッと集まっている街だと思うし、レコード屋さんも多いから。そう考えると、めちゃくちゃいい街ですよね?

ほかの街と比べても、完璧だと思います

- いや、本当にそう思います。

完璧っすね。ほかの街と比べても、完璧だと思います。

- ええ。新宿・歌舞伎町の話をうかがった後は、ここからはSUPER BEAVERの新作アルバム『アイラヴユー』に話を変えますが、今作の制作自体は早く進んだんでしょうか?

そうですね。アルバムとしては2年半ぶりなので、あえてアルバムを出す期間を空けたんですよ。1年に1枚出していたから、結構出し過ぎかなと自分では思っていたので。僕が好きなバンドは2、3年待つのはザラでしたから。それの何が良いかと言うと、自分の感情、経験の伸び代が大きいほうがいいと思ったから。今回はアルバムを作りましょう、というより、日々の中で少しずつ新曲が出来て、きっとアルバムに入るんだろうな、とみんなで話しながら進めたんですよ。

- 楽曲の鮮度優先というより、楽曲に込めた感情の濃度を大事にしたい時期に入っているんですかね?

うん。曲をふるいにかけたのは初めてかもしれない。どれを入れて、どれを入れないかをメンバーやスタッフでディスカッションしたから。今回は精査して、曲順やボリューム感を加味して選びました。

- 選曲するうえでの基準というと?

基準というか、指針みたいなものはなくて、そこはいつも通りです。自分たちがいかに感動できるかを念頭に置いたから。

-今回はメジャー再契約第1弾アルバムになります。それは頭のどこかで意識してましたか?

個人的には全くないかな。それはいいことだと思うんですよ。いままで通りの感覚でやらせてくれたから、それは有難いことだなと。

マジで聴いてほしいし、マジでいいもの(アルバム)ができました

- 渋谷さん自身は、今作はどんな作品に仕上がったと思ってます?

本当にマスターピースができたなと思ってます。ヘンな言い方だけど、こんなに聴いてほしいと思ったのは初めてかもしれない。いままでの作品も聴いてほしいし、絶対聴いてほしいと思ったけど、今回はズバ抜けていいものができたなと。マジで聴いてほしいし、マジでいいものができました。移動中も普通に聴いちゃうし、自然と入り込めるんですよね。そういう風にリスナー目線になったのも初めてかもしれない。作品が持ってる力がすごく強くて、純粋にリスナーとして聴いちゃう。15年経って、そういう感覚になれたのは嬉しかったですね。

- 今作で超えられたハードルって言葉にできます?

それが全くわからなくて(笑)。その感覚さえ掴めたら、今後出すものは全部やばくなるのは間違いないんですけどね。ライブと同じですよね。めっちゃ良かったと自分も思って、周りが言ってくれても、具体的にどこが良いのかはわからない。まぐれとは思ってないけど、いろんなタイミングが重なって、それも重要な要素になっているのかなと。

- そして、ド直球のアルバム名もインパクトがありますよね。

そうですねぇ。よく恥ずかしげもなく、付けたなと(笑)。でも全然恥ずかしくはないですね。これに関してはメジャーにもう一度戻って来れたことも大きいかもしれない。

ここまで活動して来れたのは人に恵まれたことがいちばんの武器

- このタイミングで正面を切って伝えたかった言葉だと?

つまるところ、こうだよなって。僕らは技術が高いわけでもないし、見てくれもズバ抜けていいわけではないけど……ここまで活動して来れたのは人に恵まれたから、そしてそれをいちばんの武器だと思っているから。それはどのバンドにも負けない自覚があるので、「アイラヴユー」って言えちゃうよねって。20代の自分だったら言えなかったでしょうね。4人ともいい歳の取り方をできたのかなと。

- その表題曲「アイラヴユー」は童謡にも通じる親しみやすいメロディですよね。老若男女に響く名曲だと思います。

すごくキャッチーですよね。それはいいことだと思います。届けたい言葉があるならなおさら……乗せるものはわかりやすい方がいいから。

- この曲に限らず、SUPER BEAVERが持っているシンプルな音楽的アプローチはさらに研ぎ澄まされた印象です。よりわかりやすくて、より親しみやすい曲調が増えているなと。

嬉しいですね。ポップ・ミュージックが好きだから、単純にしようということではないけど、明確にはしたかったので。

- 歌舞伎町の話と紐づけるわけではありませんが、今作で人間臭さがよりいっそう増してきたなと。

より人っぽくなっていると思います。いい意味で……あっ、いい意味ってあまり好きじゃないのに言っちゃった(笑)。

自分たちも楽しくて、聴いている人も楽しいと言ってくれたら、最高じゃん

- ははははは。

自分勝手になってきました。サービス業じゃないので、喜ばせることだけがナンボとは思ってなくて。自分たちが楽しい、幸せだなと感じられなければ意味がないから。その幸せの中に聴いてくれる人も幸せを感じてくれて、力をもらったと感じてくれたらいいですね。自分たちも楽しくて、聴いている人も楽しいと言ってくれたら、最高じゃんって。

- それは理想的な関係性ですよね。

うん、そこはブレずに来れたと思うから。20代前半では絶対にできなかった作品だと思うし、作れたとしてもこの深さは持たせられなかったと思う。

- 最後に今作のツアーに向けての思いを聞かせてもらえればと。

どんなライブにしたい、ツアーにしたいとは思ったことがなくて。去年よりもいい1年、昨日よりもいい今日にすべくと思っているので、観に来てくださる方と真摯に向き合いたいなと。ただ、今回に関しては状況が難しいですよね。人を入れて公演を打つことが正しいのか、正しくないのか、まだわからないところもあるから。難しいけど、とりあえず今は自分たちがやれることをやれる範囲の中でやりたいなと。一つも順風満帆にいかないバンドなので……おかげさまで強くなれたし、タフになれたから。今の状況がどこまで続くかわからないし、押し並べて皆さん同じ経験をしたと思うけど、そこから何を感じて、何を学ぶのか、それを考える力は自分たちは強いと思うから。いい方向に変えていけたらいいですね。

『アイラヴユー』

メジャー再契約第1弾アルバム。
アルバムの詳細
ライブに関する詳細

SUPER BEAVER

渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“32才”広明(Dr)の4人によって2005年に東京で結成された。
2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。
2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。
2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタートさせた。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。11月にはインディーズながらシングル「予感」がテレビドラマ『僕らは奇跡でできている』の主題歌に抜擢され話題を呼ぶ。
2019年11月に兵庫・ワールド記念ホールと2020年1月には東京・国立代々木競技場第一体育館で初のアリーナ単独公演を行った。
結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと契約を結んだことを発表。約10年ぶりのメジャー再契約となる。5月27日に発売された『LIVE VIDEO 4 Tokai No Rakuda at 国立代々木競技場第一体育館』が6/8付オリコン週間総合音楽DVD・BDランキングにて第1位を記録。6月10日に発売された両A面シングル『ハイライト / ひとりで生きていたならば』の表題曲である「ハイライト」と「ひとりで生きていたならば」がiTunes ロックチャートにて1位と2位を獲得し、バンドの勢いがそのまま表れた結果となった。「ひとりで生きていたならば」が11月13日(金)より公開の中条あやみ主演映画『水上のフライト』の主題歌に起用される。10月21日にはメジャー再契約第2弾シングル『突破口 / 自慢になりたい』がリリース。表題曲「突破口」は10月2日(金)よりMBS,TBS,BS-TBS “アニメイズム” 枠にて 放送中のTVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クール オープニングテーマに起用されている。
今最も注目のロックバンド。

オフィシャルサイト
YouTubeチャンネル

【Interview】Vol.14 新宿・歌舞伎町で生まれ育った男、SUPER BEAVERの渋谷龍太に聞く、街への関わりと深い愛。

文:荒金良介
撮影:森崎純子

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