【Interview】Vol. 15 「この仕事って相手をよく見ることが大事なのかな」塩野瑛久が10年で気づいたこと

文:西森路代
2021.02.12

今月から不定期で俳優×歌舞伎町の連載がスタートする。第一回は、『PRINCE OF LEGEND』や『HiGH&LOW THE WORST』で注目の塩野瑛久。フォトグラファーには、さまざまな男性俳優の写真が話題の荒木勇人を迎え、普段とはまた違う塩野瑛久像に迫った。今年で俳優生活10年目に突入する塩野が感じたことを、余すところなく語ってもらった。

- 今日は歌舞伎町を舞台にした撮影でしたが、東京出身の塩野さんにとって歌舞伎町の印象や思い出は?

二十歳くらいで初めて来たと思います。その頃、『純平、考え直せ』という小説が原作の舞台で、主役の純平役をやらせてもらったんです。純平は歌舞伎町のチンピラで、ある日、鉄砲玉を命じられるんですけど、実際に歌舞伎町ってどういう街なのか見てみようということで、けっこういろんな路地裏にも行ってみたりしました。眠らない街とか、ネオンが光っているイメージはありましたけど、街で客引きの人とかに声かけられたりもなかったですね(笑)。

- 気配が普段は出なくてスイッチが入るタイプなんですね。その後も歌舞伎町には?

ちょくちょく来ます。ちょっと裏に入ったところに、お茶漬けが食べられるバーがあって、そこに前は行ってました。僕、お茶漬けが好きなんですよ。お店で食べられるちゃんとしたのも好きですし、インスタントの梅のお茶漬けも好きで。昔のお茶漬けのCMとかでおいしそうに食べてるのとかいいですよね。話してたら食べたくなってきました(笑)。前に、謎解きをやっているビルにも遊びに行きました。

- 塩野さんはデビューが10代半ばだったんですよね。その間、塩野さんとして転機になった作品はありましたか?

今年で活動を始めて10年目に突入します。自分の心の在りようという意味での転機があった気がしますね。自分の思いを人に伝えられるようになってから変わりましたね。もしデビューしてとんとん拍子だったら、きっと今とは違う塩野ができあがってたのかなと。今になって考えると、今の塩野ができあがってよかったなと思います。

- 心の在りようが変わったのは、なぜだったんですか?

何がきっかけだったんだろう……。でも2018年にドラマ『PRINCE OF LEGEND』の撮影に入るちょっと前の時期だったことは確かなんですよ。自分の気持ちが変わってからオーディションがあって、変わったから話が来たのかもしれないし、変わったからこそ出演に至ったのかもしれないです。

- 企画プロデュースの植野浩之さんはオーディションにいらしたんですか? その後の演技で、現場で褒められたりしたことは?

そうですね。植野さんは、もう一段、俳優として上にいきたいという人を拾ってくれる方ですね。僕は役について、ものすごく考えてしまうので、誠一郎のせつなさに対しても、「僕はこうしたいんですけど、一回やってみてもいいですか?」と言ってやったことを採用していただいたり、監督からも「ありがとう」と言っていただけたりして。僕はあんまり良い評価を真に受けないようにはしているんです。でも、自分がそのときこうしたいと思ったことが通って、それが良いって言ってもらえたので、自分自身でもそれを認めていいのかなと思えた瞬間でしたね。

- 『PRINCE OF LEGEND』での経験は、その後も活かされましたか?

『HiGH&LOW THE WORST』という映画に出たんですが、そこで小田島有剣という役を演じるときにも、『PRINCE OF LEGEND』を通ってきたからこそ、何を求められているのかということがわかるようになって。この作品でも、俳優として役を深堀りして、大事に演じていたら、『よかったね』という言葉をたくさんもらえたので、これからもそういうことを大事にしていこうと思いました。

- それは、いろんなことを試させてもらえる現場だったということですか?

もちろん、一人一人のことはよく見てくれているけれど、いい意味でキャラクターをどう見せるかということについては各々に任せる放任主義みたいなところもあって、受け入れてくれることは多かったと思います。「こうしてくれるかな」と言われたことはなかったですね。

- たくさんの同年代の俳優がいて、それぞれが爪痕を残そうと思っている現場でもあると思うんですが、そのうえで、全員で作っているということも忘れてはいけない現場でもあると思うんです。その辺のバランスはどう考えていましたか?

人のためにすることが、結局は自分に返ってくるのかなと思ってました。お芝居って、対峙する人のことを思いながら演じると、一番いい芝居が出てくると思うんですよ。例えば、自分が泣こうと思って、その気持ちだけで演じても、芝居が薄くなると思うんです。自分がこう感じたとか、こう思ってるから泣くというよりも、自分がこの発言をしたら相手が傷つくんじゃないか、でも自分の気持ちとしてはおさまりがつかないとか、そうやって相手のことも込みで考えたほうが良い感情が生まれるなと感じていて。だから、この仕事って相手のことをよく見ることが大事なのかなと思うんです。

- 何か具体的にそういうことを考えながら演じたシーンはありましたか?

「そうですね。『HiGH&LOW THE WORST』で僕が演じる小田島有剣は鳳仙学園という学校の生徒で、志尊淳くんが演じる佐智雄がその学校を束ねるリーダーを演じているんです。小田島は佐智雄の右腕なので、大人しくしているっていうのも正解かもしれないけど、小田島が一筋縄でいかないキャラクターになったほうが、それを束ねてトップに君臨している佐智雄がすげえなと思われて輝く。だから、自分のことを考えてというよりも、やっぱり佐智雄という相手のことを考えていたし、そのほうが深みが増すんだと思って演じていましたね」

- 2020年は、『来世ではちゃんとします』『不倫をコウカイしてます』『僕らは恋がヘタすぎる』『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』などのドラマにも出演、舞台『「DECADANCE」~太陽の子~』や、「LINE NEWS」の縦型動画コンテンツ「VISION」においての『A/LIVE(エーライブ)』にも出演されていました。一年を振り返ってみていかがでしたか?

やっぱりこのご時世だったので、撮影の仕方が特殊だったりして、新しいことに挑戦した一年だなと思いました。『不倫をコウカイしてます』なんかは、動画を配信している設定で、長まわしだったので、セリフに追われて、鍛えられた現場だったかもしれません。LINE LIVE「VISION」という企画も、僕らは舞台の上で演じていて、それを映像として生配信をするというものだったんです。新しくて挑戦的で、かつテクニカル的には難しいこともありました。僕らのお芝居も、舞台をやっているように演じたらいいのか、映像をやっているように演じたらいいのか、いい塩梅を見つけないといけませんでした。

- かなり複雑なことに挑戦していたんですね。

「本当に複雑でした。物語の中にインサートのシーンがあると、それを舞台で見ながらお芝居を続けるのがいいのか、もしくは捌けたほうがいいのか、そういう不思議なやり方が続いて。前例がないので、体がついていくのかと必死でしたね」

- それ以外にも、やっぱり2020年はアルビオン・エレガンスコスメティックス新作リップのキャンペーンモデルも務められて、その流れで、塩野さんがプライベートでメイクした写真がものすごくバズりましたね。

キャンペーンモデルのお話をいただいたこと自体がうれしくて、それを自分の中で拡大して…っていうとおこがましいんですけど、自分のできる範囲で表現できないかなと思ってやってみたんです。

- メイクは男性だってしてもいいんだという思いも伝わって、結果、二万リツイートを超えていましたね。

その前から、そういう企画もあったけれど、あの後もメンズのメイクの企画はどんどん増えましたね。僕自身も、美容の企画ものに呼んでいただいたりと、声をかけていただくことが多くなって素直にうれしいなと思ってますし、これからもお待ちしています(笑)。

- 雑誌「CUT」の「美しい男たちにひれ伏す」特集号にも出演されていましたし。塩野さんというと、「美しい」という形容詞がついてくることも多いのですが、それに関してはどういう気持ちですか?

こういうことを本人がコメントするのって、なかなかこっぱずかしかったりするんですけど(笑)、僕はもう振り切ってるので、面白がって捉えてもらえたらなと。草でも生やしながらリツイートしてくれたらいいなと思っています(笑)。

- なんでも楽しんでくださいという気持ちなんですね。逆に美しいということから離れたいとか、そういう願望はありますか?

これは「CUT」のインタビューでも言ったこととつながるんですけど、なんにせよ人って美しいと思うんです。外見とかでなくても、必死に生きる姿って美しいし、必死に生き続けたいなと思ってますし、美しくない瞬間はないんじゃないかなって思うんです。

- この仕事を10代で始めると、学生気分が抜けなくて、俳優として本気になったのは数年後だった、ということを聞くことも多いんですけど、塩野さんはいかがでしたか?

僕に関して言うと、中学を卒業して以降、この仕事以外のことはやっていなかったので、最初から本気でした。こんな風にしゃべるようになったのも、いろいろ役に対して考えるようになったのも、人より早く社会に出たので、学校に行ってる人に負けないものを作らないといけないと思っていた時期があったからなんでしょうね。その中で、もがいていた時期のことが今、反映されているのかなと思います。

- 自分自身でいろんなことを学ぶのってなかなか難しいと思うんですけど、そこはどう打破しましたか?

そういう状況になって初めて人ってちゃんと考えるんじゃないですかね。「やべー俺やんなきゃ」って追い込まれただけです。

- そういういろんなことを率直に語ってくれることが、インタビュアーからしても、すごくうれしいです。

それも現場で人のふりを見て、特に教わったわけじゃないんですけど、やっぱり記事にしてもらえることを話さないと、その人のためにならないなと思ったんです。そして、それが僕にとっても必要なことだとわかったので、活字にできることをなるべく言おうと思うようになったんです。

- それも、演技のときに、相手のことを考えたほうが自分に返ってくるということにつながりますね。取材も一個一個ちゃんとやってくれると、ファンの人にも届きますし。

- 今年もいろんな活動をされると思いますが、まずは1月に写真集が発売になりましたね。撮影を奥多摩でされたそうですが。

ファースト写真集では、そのときあった僕の素材を使って、いろんな方にいろんな『塩野瑛久像』を作ってもらったと思うんですね。そういう人の力があってこそできたものだったと思うんです。今回は、僕が成長して、ある意味、等身大の姿を見せられている写真集になったと思います。等身大というと、生の自分とか普段の自分みたいな感じに聞こえるかもしれないけど、今の僕の考えたことを表現にこめたという意味での等身大が見られると思います。

- 塩野さんは、ファンの方との交流の場である公式ファンサロンを作るにしても、Instagramに載せる動画の編集にしても、自分で何かを企画していく人なんですね。写真集もそういう感じになってそうですね。

ファンサロンについては、自粛期間中にそのことばっかり考えていました。写真集については、こんな衣装のイメージでとか、この衣装を着るならこんなイメージのところがいいとかは考えました。あとは、ずっと一緒にやってきたスタッフのインタビューも収録されていて、皆が僕のことを語ってくれているって、ほかではあまりないことかなと。僕もできあがるまでは、なんて言ってるのか知らないので楽しみなんです。僕が今何を思って活動しているかとか、どんなスタッフと出会って、この人たちがいるからこういう考えに至ったんだということが見せられている写真集になっているんじゃないかと思います」

塩野 瑛久(しおの あきひさ)

1995年1月3日生まれ。東京都出身。男性エンターテイメント集団「男劇団 青山表参道X」の副リーダー。2011年に開催された第24回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストにて、審査員特別賞およびAOKI賞をW受賞。翌2012年に芸能界デビュー。2013年には、『獣電戦隊キョウリュウジャー』に立風館ソウジ / キョウリュウグリーン役で出演で話題を呼ぶ。主な出演作に、ドラマ『PRINCE OF LEGEND』、『さくらの親子丼』、『Re:フォロワー』、『来世ではちゃんとします』、『僕らは恋がヘタすぎる』、『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』、映画『HiGH&LOW THE WORST』、『貴族降臨-PRINCE OF LEGEND-』などがある。LINE NEWS「VISION」にて『A/LIVE』が配信中。
日本テレビ系土曜ドラマ「レッドアイズ 監視捜査班」第4話にゲスト出演。

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塩野瑛久セカンド写真集『bloom』

2,800円(税別)

自身も企画段階から参加し、何度もディスカッションを重ね、俳優としての生き様を表現したセカンド写真集。大自然の中で着物を纏って見せた、“男らしさ”と“美しさ”の二面性、衣裳・ヘアメイクにこだわり、作り込んだ空間で佇む姿、等身大の表情を見せたカットなど、彼が今世の中に伝えたいメッセージを物語にして紡いだ一冊。

Photo:荒木勇人
Styling:山本隆司
Hair&Make:時田ユースケ(ECLAT)
Text:西森路代

【Interview】Vol. 15 「この仕事って相手をよく見ることが大事なのかな」塩野瑛久が10年で気づいたこと

文:西森路代

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