【Interview】Vol.17 YOASOBIライブレポート&インタビュー 1st ワンマンライブの記憶を新宿歌舞伎町で刻み込んだYOASOBI。ライブ直後の貴重な2人のインタビューを、ライブレポートとともに紹介する。

文:永堀アツオ
2021.02.22

ライブの会場となったのは、東京・新宿歌舞伎町1丁目にある新宿ミラノ座跡地

YOASOBIが新宿歌舞伎町にやってきた――。

2021年2月14日の日曜日。よく晴れた1日。建設中のビルから眩い光と音が溢れていた。ビルの8階で音楽を鳴らしていたのは、2019年10月1日に結成され、デビュー曲「夜に駆ける」のストリーミング再生が脅威の4億回を突破。昨年末には第71回NHK紅白歌合戦にも初出場した男女2人組ユニット、YOASOBI。彼らにとっては、初となるワンマンライブ『KEEP OUT THEATER』を無観客という形で開催し、生配信を行った。

記念すべき1st ワンマンライブの会場となったのは、東京・新宿歌舞伎町1丁目にある新宿ミラノ座跡地。1956年に「新宿ミラノ座」が開館し、かつてはスケートリンク場やボウリング場も併設していたが、2014年末をもって閉館。現在は、新たに映画館、劇場、ライブホールなどのエンターテインメント施設とホテルやレストランなどの店舗を擁するエンタメ複合施設を建設中で、2023年に地上48階、地下5階の高層複合ビルとしてオープン予定。この日、YOASOBI が特設ステージを設置したのは、シートで囲われたビルの地上8階に位置するフロア。将来的には約900人収容の劇場になる予定だが、現在は鉄骨梁や柱、コンクリートの床は設置されているものの、ビルの側面となる壁はまだ取り付けられておらず、8階の上下のフロアも現在、建設中。彼らがバンドセットを組んだのは、劇場が完成した際には1階の客席になる場所、そして3階席まである劇場のため天井は高く抜けていた。やがてステージとなる背面の先にはTOHOシネマズ新宿の壁面に描かれた巨大なゴジラのイラストがこちらを凝視しており、逆方向、客席の2階〜3階が設置される面から階下を覗くと西武新宿駅が見えた。この会場のこの場所でライブを行うのは間違いなくYOASOBIが最初で最後になるだろう。

バンドが音を重ねると同時に、背面には花火が投射され、楽曲の世界観を際立たせていった

バンドメンバーとともにエレベーターに乗り込む彼らの足元の映像からライブは始まった。幅5メートル、奥行き2メートル、高さ3メートルで27人乗りという巨大なエレベーターに彼らが乗ると、ガシャンという大きな衝撃音とアラームが鳴り響く中でドアが閉められ、1分100メートルの速度で上がっていった。円陣を組んで気合いを入れたメンバーを乗せたエレベーターは重々しい音とともに8階に到着。AssH(G)、禊萩ざくろ(Key)、やまもとひかる(B)、仄雲(Dr)に続き、YOASOBIのAyaseとikuraがエレベーターを降り、特設ステージへと歩みを進めた。やがて、ikuraは“YOASOBI”と象られた電飾の前でひとり足を止め、お馴染みのキービジュアルを想起させるロゴの前で「あの夢をなぞって」をアカペラで歌い出した。彼女の背景にはリアルな夜の空が広がっており、その先には細い月が見えた。バンドが音を重ねると同時に、背面には花火が投射され、楽曲の世界観を際立たせていった。

工事現場の作業灯が照らされ、彼らがどんな場所でライブをしているのかがはっきりとわかった

「画面の向こうの皆さん、ぜひ一緒に盛り上がっていきましょう」というikuraの呼びかけを経て、甘く苦い思い出を振り切っていく「ハルジオン」へ。ここで初めて工事現場の作業灯が照らされ、彼らがどんな場所でライブをしているのかがはっきりとわかった。そして、最初のMCでは、「この日のために、半年間かけて、頑張って準備してきたから、ちょっと震えます」と正直な心境を吐露したikuraが、「ここは、新宿ミラノ座の跡地。現在、新しい劇場を建設中の工事現場よりお届けしております。私たちが立ち入り禁止の場所に潜り込んで音楽を奏でているような、YOASOBIらしい場所でお送りしております」と『KEEP OUT THEATER』というライブタイトルについても説明。また、画面の向こうにいるオーディエンスに向けて、「同じ時間を一緒に過ごせてうれしいです」と語りながらも、「ほぼ外の8階。寒いんですよ。みんなはお家でぬくぬくと見てくれていると思うんですけど」と笑いながら煽り、「こちらも熱々の音楽を届けられるように頑張りましょう」とメンバーとともに意気込んでみせた。

「ずっと同じ部屋で過ごしてきた二人の別れの朝を描いた曲です」と紹介した「たぶん」では、キーボードの譜面が捲れるほどの強い風が吹く中で切ないラブストーリーを丁寧に紡ぎ、「ハルカ」ではカメラ目線で<泣かないで>と訴え、優しく伸びやかな歌声を響かせた。

「ハルカ」の原作「月王子」に因んで思い思いのマグカップで乾杯をしたあと、舞台の雰囲気は一変した。スモークが焚かれ、青、赤、ピンクの光が交錯し、不穏で妖艶なサウンドが打ち鳴らされた。ikuraは「画面の向こうにいるみなさんも、夢を追う中での迷いや葛藤、周りの人に言えない悩みをたくさん抱えていると思います。そのみなさんが心の中からさらけ出せるような、背中を押せるような曲を届けられたらなと思います」と語り、「大切なものを守るために、自分の本能と戦いながら、心の中にあるものを解き放っていく曲」だという最新曲「怪物」は、まさに獣の叫びのようなカオティックで狂騒的な空間の中から、たった1つの大切な想いが浮かび上がってくるようなパフォーマンスとなっていた。続いて、初のパッケージとなった1st EP『THE BOOK』のオープニングを飾ったインスト「Epilogue」が演奏される中で、ikuraは「こうやって、怯えるような毎日の日々の中で、みなさんと画面を通して繋がることができて幸せです。明日も明後日も音楽が鳴り続けますように」と祈りと願いの言葉を届けた。スモークはバンドメンバーの膝下ほどまで満ちており、場内は真っ白なライトが照らされ、背面には虹がかかっている中で歌った「アンコール」への流れはこの日のハイライトであった。

ここで二人はユニット結成から初のワンマンを迎える日までを振り返り、数多くのスタッフやファンへの感謝の気持ちを述べながら、こう語った。

「今日、この日を迎えて、1人じゃないんだなって感じることができました」

「この1年は、私たちにとって、とっても大きく変わった1年だったことは間違いないです。私は、YOASOBIという活動が始まってから、追いつくのに必死でした。振り落とされないように、しがみついていくのに必死で、その時はまだまだ怖さがすごくありました。でも、今日、この日を迎えて、1人じゃないんだなって感じることができました。ネットに配信した1曲から始まって、そこからこんなに多くの人に見ていただける日が来るなんて思っていなかった。今は怖さよりも、これからのワクワクにつながってます。この場に立てていることも、こうやって音楽を続けられることも幸せだなって噛み締めています」(ikura)

「僕らにできる精一杯の音楽を画面の向こうの貴方にもしっかり届けられたら」

「最初はほんとにたった4人だけで始まったんです。自分たちもどうなるかわからない状況でやってきて、ここまで駆け上がってきた。ほんとに、こたつでPCで作った曲で始まったことが、こんだけ大きなことになっていく実感が、今もしっかりとは無いけど、ほんとに幸せ者だなと、周りに恵まれているなと、日々感じています。だから、僕らにできる精一杯の音楽を画面の向こうの貴方にもしっかり届けられたらいいなと思います」(Ayase)

2020年を象徴する大ヒット曲となったデビュー曲「夜に駆ける」では、画面越しのファンと手を繋ぐように歌うikuraの背景に大きな手のシルエットが映し出され、「群青」ではバンドメンバー1人1人にスポットを当て、しっかりと目を合わせながら全員で大合唱。エンディングでは、2人でビルの東側に位置する剥き出しの柱にサインを記し、初のワンマンライブは幕を閉じた。

ライブ中に「始めるためにやってきたのに、終わっちゃうのが寂しい、なんだか寂しくなってきちゃった」と何度も語っていた2人は、配信が終わった瞬間にその場で座り込んだ。果たして、どんな感情が湧き上がっていたのか。終演後の二人にインタビューを敢行した。

— 先ほど、演奏が終わった瞬間に2人同時にその場で座り込んでましたね。

ikura:ほんとに今日、この日のために、去年の10月からリハを続けてきて。この1時間の本番のためにずっとやってきたので、「あ、終わってしまった……」って感じて。

— それはどんな感情ですか? 達成感なのか、寂しさなのか。

ikura:うーん、たぶん、50種類くらいの感情がありました(笑)。でも、その中では、やっぱり、寂しさと安心と、楽しかったなっていう気持ちが3大感情ですね。

Ayase:僕も一緒ですね。なんか座り込んでしまって。

ikura:一旦ね(笑)。

— (笑)そのあと、立ち上がってハイタッチしてました。

Ayase:そうですね。やっぱり配信ライブだから、目の前でお客さんの反応を見れないじゃないですか。自分たちは楽しかったけど、実際はどうだったのかな? っていうのは気にはなっていたんです。でも、ひとまず、「楽しかったね。お疲れ様」っていう気持ちでハイタッチしてましたね。僕は楽しかったなっていう気持ちが一番強かったです。

— 1st ワンマンにはどんな思いで臨みましたか?

Ayase:正直、YOASOBIが始まった時は……もちろん、いい波に乗れたり、何か結果が出た時はライブができたらいいねってことは、ぼやっと想像はしていたんですけど、ライブっていうことに実感が湧いていなかったんですね。MCでも言いましたけど、ほんとに僕とikuraちゃん、ソニーのスタッフ2人の4人だけで始めて。「夜に駆ける」はこたつでPCで作った曲だし、ikuraちゃんとは初めましての状態でプリプロをやってレコーディングをした。ほんとに誰にも知られていない、芽にもなっていなかったものが、わずか1年半で1st ライブができるようになったんだなっていう、諸々の思いを全部、込み込みでジーンときてるって感じです。

ikura:最近はテレビで歌唱させていただく機会も多かったんですけど、自分たちのフィールドで、このボリューム感でやるライブが初めてで。今まで発表してきた、これだけの曲数とこれまでやってきた時間がこの1回に詰まってる。そういう意味では、今、現段階での集大成だったので……なんだろうな。4人から始まった、何者でもなかった私たちがこういうふうにライブをやれているっていうのは不思議な感覚でしたね。

「ここでライブをやるのは絶対に僕らが最初で最後になりますよね」

— しかも、ライブハウスやホールではなく、建設中の工事現場でした。

ikura:すごいですよね。こんなロケーション、見たことないです、見てくれたお客さんも、きっと見たことがなかったと思う。これからもYOASOBIは、普通は思いもよらないような発想で、YOASOBIという名前らしくやっていくんじゃないかなって、ちょっとワクワクしました。

Ayase:ほんとになかなか例を見ない場所ですよね。廃墟でやるならわかるんですけど、今、まさに建設中の場所。ここでは僕らしかできないし、ライブをやるのは絶対に僕らが最初で最後になりますよね。ほんとに貴重な経験をさせていただいたと思いますし、実際に許可をいただいてやらせていただくということに大感謝しかない。工事が進んで、立派なビルになっていく。その礎の1つに、劇場になる場所の歴史の1つに、名を刻めたのは光栄だなって思います。

「初めてしっかりとお話させていただいて、本当の私たちをお見せできた」

— 前日にはリハーサルでも訪れていますが、特に印象に残っているのは?

ikura:本番で「夜に駆ける」を歌う前のMCですね。お互いにこれまでを振り返ったんですけど、泣きそうになるのを必死に堪えてて。泣いたら歌えなくなってしまうぞ! と思って、堪えてましたね。なんか、この1年、忙しくさせていただいてきたことはインタビューで話してきましたけど、自分たちがどんなことを感じてきたのか、お客さんにしゃべることがなかったんですね。初めてしっかりとお話させていただいて、本当の私たちをお見せできたというか。きっと得体の知れない人たちだったろうから、自分たちの思いを話してる時はすごくエモーショナルな気持ちになりましたね。

Ayase:僕も「夜に駆ける」が始まって、ikuraちゃんの声が聴こえた時はものすごく泣きそうになりましたね。あとは、メモリアルというか、グッときたのは、本番が始まる前の楽屋ですね。みんなでわちゃわちゃしながら、実際にもうかなりの数の人が待機してくれてるよっていうのを聞いて。僕もずっとバンドマンをやっていて。ほんとに数十人のお客さんの前でやっていたところから、4万人もの人が待ってくれているステージに自分が立つんだな、という。そこまで1つたどり着いたんだなって、本番が始まる前にジーンときましたね。

「生活環境も変化したし、1つたどり着いたぞっていう気持ちにはなりましたね」

— ちなみに、ここ、新宿の思い出は何かありますか。

Ayase:僕、すぐそこ(線路沿いを指差して)でバイトしてました。

ikura:あはははは。思い出がありすぎるね。

Ayase:2年前かな。YOASOBIが始まるちょっと前までコールセンターでバイトしてて。

ikura:じゃあ、ここがまだミラノ座だった?

Ayase:いや、もうなかったと思う。バンダイナムコのゲーセンはあったかな。当時、時給1000円くらいのバイトを必死にやっていたところから、「やってやったぞ!」というよりは、シンプルにグッときてる。いや、やっぱり、「やってやったぞ!」かな(笑)。生活環境も変化したし、1つたどり着いたぞっていう気持ちにはなりましたね。他にも、新宿では3つくらいバイトしてたので、めちゃめちゃ思い出深いですね。

「高校生の頃に路上ライブをやってたことがあって。そんな日をちょっと今日、思い出したり」

ikura:私は新宿で、高校生の頃に路上ライブをやってたことがあって。人は止まらずに通り過ぎるし、寒い中、凍えそうになりながらギター一本で歌ってて。たまには罵声も浴びせられたりもしたんですね(笑)、そんな日をちょっと今日、思い出したりしてました。同じ街で、これだけ多くの方に支えられて、画面の向こうには、数え切れないほどのお客さんがいる中で、認められた場所で、堂々と演奏できることがすごくジーンときましたし、感慨深かったですね。

— 2年後にはライブホールと劇場ができます。

Ayase:誰よりも先に絶対に超えられないこけら落としを僕らはやってしまったわけですからね。

ikura:いや、ほんとに、今日はメモリアルすぎたね。

Ayase:完成した際にはまたライブがやりたいね。

ikura:是非是非。その時は絶対に呼んでください!

YOASOBI 1st ワンマンライブ『KEEP OUT THEATER』
2021年2月14日 新宿ミラノ座跡地

<セットリスト>
1.「あの夢をなぞって」
2.「ハルジオン」
3.「たぶん」
4.「ハルカ」
5.「怪物」
6.「アンコール」
7.「夜に駆ける」
8.「群青」
【ファンクラブ『CLUB 夜遊』限定】
9.「夜に駆ける (THE HOME TAKE Ver.)」

YOASOBI

コンポーザーのAyase、ボーカルのikuraからなる、「小説を音楽にするユニット」 。2019年11月に公開された第一弾楽曲「夜に駆ける」は2020年12月にストリーミング再生3億回を突破し、Billboard Japan 総合ソングチャート“HOT100”にて2020年年間1位を獲得。第二弾楽曲「あの夢をなぞって」は原作小説がコミカライズ、第3弾楽曲「ハルジオン」は飲料や映像作品とのコラボレーションを果たし、7月20日に第4弾楽曲「たぶん」、9月1日にブルボン「アルフォートミニチョコレート」CMソング「群青」をリリース。12月には鈴木おさむが原作小説を手掛けた楽曲「ハルカ」を発表。2021年1月6日に満を持して初のCD『THE BOOK』をリリース。豪華な仕様が大いに話題を呼び、オリコンデイリーランキング初登場2位を記録しながら、配信では全ての楽曲がApple Musicストリーミングチャートで15位以内に同時ランクインするという快挙を達成した。原作小説の書籍化や映画化など、音楽以外の領域にも展開の幅を広げている。

Official Site
Twitter
YouTube Channel
TikTok

【Interview】Vol.17 YOASOBIライブレポート&インタビュー 1st ワンマンライブの記憶を新宿歌舞伎町で刻み込んだYOASOBI。ライブ直後の貴重な2人のインタビューを、ライブレポートとともに紹介する。

文:永堀アツオ
撮影:Kato Shumpei

この記事をシェア

OTHER ARTICLE他の記事