【Interview】Vol.20 山田孝之と山田佳奈が見つめ続けてきた、異種格闘技の街・歌舞伎町<後編>~『全裸監督』での創作作業、そして……

文:野上瑠美子
2021.06.30

日本を代表する俳優にして、その活動はすでにとどまるところを知らず、“表現者”として自由に、そして大胆に飛躍し続けている山田孝之。そして劇団「☐字ック」の主宰で、脚本家、映画監督など、気鋭のクリエイターとして注目を集めている山田佳奈。話題のドラマ『全裸監督』でそれぞれ俳優、脚本家として名を連ねるふたりだが、意外にも対談だけでなく、しっかり言葉を交わすのも今回が初めてだと言う。そんなふたりの対談<後編>では、『全裸監督』、『MIRRORLIAR FILMS』にまつわる話を中心に、創作者、表現者としてのふたりのこだわりに迫る。

— おふたりともジャンルに囚われずさまざまな活動をされていますが、その原動力となっているのはどんなことなのでしょうか?

山田孝之(以下孝之):芝居は好きですが、“職業=俳優”と決めたことは一度もないです。17か18のころには、「あっ俺、別に俳優じゃなくてもいいや」っていうか、むしろ「俺は俳優だけじゃないはずだ」と思うようになって。もっと向いていることがあるはずだから、それが見つかるまでの間、俳優をやっておこうと。あと明日死ぬかもしれないから、今日をとことん楽しみたい、みたいな感覚で生きているのも理由だと思います。だからこそいろいろなことを、基本的には表現ですが、やってみたいと思っているんです。

山田佳奈(以下佳奈):私は演劇から派生してこういうお仕事をさせていただくようになったので、「舞台でやってくの? 映画にするの?」とか、「作家になるの? 商業作家になるの?」みたいなことを聞かれる機会が一時期すごく多かったんです。そう聞かれる度に、どちらか選ばないといけないのか、疑問に感じていて。でも映画で培ったことが舞台に生かされたり、角度を変えれば結局すべて繋がるんだってことがわかってからは、どちらかに決める必要はないと思うようになりました。自分が信じるものを描く。そこさえブレなければ、別になにをやってもいいんですよね。

孝之:僕は単純にワクワクしないことはやらないです。ただ自分発信でやっていることはあまりなくて、誘われることの方が多いですね。『全裸監督』もそうで、「『全裸監督 村西とおる伝』を原作として、Netflixでドラマをつくります。その村西とおる役を、山田さんにお願いしたいです」というお話をいただいて。その時は脚本もなくて本当にそれだけ。でも大枠さえ投げてもらえればこちらもいろいろ考えられますし、逆に大枠さえ無い時は腹が立つんですよ。少しはそっちも考えろよって(笑)。

— その『全裸監督』ですが、脚本を手がけたことで、“山田佳奈”という名前がより周知されるようになったのではないでしょうか?

佳奈:恐縮です。『全裸監督』に関してはお恥ずかしい話もあって、あの現場で気づかせてもらったことも多かったなと思うんです。脚本家が4人(※ほかに山田能龍、内田英治、仁志光佑が担当)、顔を突き合わせて、何か月も書くことってまずないですから。当然、脚本家の手癖にも個性がありますし、このチームでやるのであれば、自分の手癖をどう使えばいいのかってことも考えたりしました。

孝之:事前に『ナルコス』(※Netflixオリジナルシリーズのドラマ)の脚本家の方が来て、講習みたいなものを受けたりもしましたよね。「村西とおるとはなんなのか?」とか、「共感を得ない主人公を引っ張っていくには、どうストーリーを運んでいけばいいか?」とか。すごい数の人が参加していて、中には韓国の人とか、かなり若い子もいて。

佳奈:脚本アシスタントとして女性がふたり入ってくれていたんですが、ひとりは大学生で、もうひとりは20代後半の韓国人でした。彼女には、同じ女性でも国によってこんなにも違いがあるんだってことを気づかせてもらいましたね。私は日本人の女性として、今までかなり鈍くなっていたというか、グレーにしてきてしまった部分が多かったんだなと。その日本人としてのアイデンティティ、女性としてのアイデンティティってものを、今回改めてゼロにしてもらえた気がして。それはあの時期の自分にとって必要でしたし、本当にいい機会をいただいたなと思っています。ただ実は私、孝之さんがおっしゃった講習を受けられていなくて……。

孝之:あっ、そうでしたっけ?

佳奈:そうなんです。女性視点が必要だと追加されたメンバーだったので。ただ一度だけ、撮影現場を見学させてもらったことはあるんです。シャンパンタワーのシーンって覚えていますか?

孝之:もちろん、もちろん。あそこにいらっしゃったんですね?

佳奈:ええ。自分が書いたものがこうなるんだなと思うと興味深かったです。あと孝之さんの役のつくり方がすごく印象的で。現場で歩いている姿を見た時、視界にフィルターがかかっているというか、目の前になにか映像を見ているような感じがしたんです。きっとあれは、孝之さんの中でいろいろなものを分解したり、消化したりしている時の目なんだろうなと。実は昨日、孝之さんのドキュメンタリー(※TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY『No Pain, No Gain』)を観ていたんですけど……。

孝之:あれ長いのに(笑)。

佳奈:せっかく対談させてもらうので、少しでもお相手のことを知っておきたいと思って。で、本当に気持ち悪い言い方になるんですけど、これ観たらそりゃファンになるわって思いました(笑)。

孝之:(笑)。

佳奈:あんなに真摯に作品に向き合って、傷ついて、戦って……。やっぱり戦っている人にはドラマしかないですし、だからこそ『全裸監督』の現場でひとり反芻するような目をされていたんだなって。あれを観た時に、すごく腑に落ちた気がしました。……あっ、なんかすみません。変な話しちゃいましたよね?(笑)

孝之:いやいや。ちょっと自分の株が上がった気がします(笑)。

佳奈:私の中ではかなり上がりました! 本当にすごい方だなって。

— 村西とおるさんは実在する人物ですが、その場合、役の構築の仕方なども変わっていくものですか?

孝之:変わらないですね。漫画原作にしろ、オリジナルにしろ、それはいるものとして存在させるので。村西さんとは一度食事会でお会いしましたが、その3時間くらい、ずっと村西さんがひとりでしゃべられていたんですよ。僕はひたすらそれを見ていて。どういうふうにしゃべるのか、どういうふうに人を見るのか。もう70過ぎなのでしゃべり方はわりとゆっくりなんですけど、相手にしゃべらせないように、ずっと、ね、こうやって間を、ね、埋めて、ね、いるんです(笑)。僕もドラマでは結構「ね」って言っていますけど、実際に聞くともっと言っている。相手がなにを思っているのか探りつつ、すごく慎重に、ゆっくりしゃべられているんだなと。ただドラマはもっとお若い時の話ですし、もう少し早くしゃべるようにしました。

— ファン待望の「シーズン2」の配信がついに開始されました。

孝之:実はシーズン2をやることは最初から決まっていたんです。シーズン1でうだつの上がらない、インチキ英会話のセールスマンが、AV業界の頂点に立つ。そしてシーズン2で一気に転落すると。当初はプロデューサーとしても声をかけていただいていたんですが、僕、村西を演じなきゃいけないので(笑)。僕を通してとはいえ、村西の主観が入ってしまうと、たぶんいいホンづくりは出来ないんじゃないかなと。それで俳優に専念させてもらうことにしたんです。

佳奈:今回私は完全に一視聴者なので、配信すごく楽しみです!

孝之:いやぁ、どうなるんですかね。わからないです(笑)。

— もうひとつおふたりが関わっている企画として、『MIRRORLIAR FILMS』があります。若手、ベテラン、メジャー、インディーズと、36名の監督が短編映画を制作。それを9作品ずつ、4シーズンに分けて上映するというプロジェクトですが、孝之さんは企画、監督として、佳奈さんは監督として参加されていますね。

孝之:36枠中、24枠は監督や俳優に声をかけていますが、実はメインは一般公募の12枠の方なんです。YouTuberやTikTokerがこれだけ多く活躍していて、熱意さえあれば、誰もが映像をつくって発信出来る時代。そうなるともう、映画業界に才能は集まって来ないんですよ。でもそういう人たちを引っ張って来たい!という想いで、このプロジェクトを立ち上げました。24枠の方は初めて監督をされる方も多くて、断られることが結構ありました。でも「10分の短編なら……」ってことで挑戦してくれる人が増えてきて。で、それによって長編をやりたくなるんですよね、絶対。それが俳優でも、漫画家でも、床屋でも、主婦でもいい。とにかく新しくクリエイターを生む、発掘、育成していくことが、このプロジェクトの目的なんです。

佳奈:参加されている武(正晴)さんも藤井(道人)さんも大好きなので、その監督たちと同じスクリーンで、同じ時間に自分の作品が流れるなんて、すごく名誉なことだなと思っています。

孝之:武さんにこの話をした途端、「短編久しぶりだー!」って言いながら肩ぶんぶん振り回していましたし(笑)、紀里谷(和明)さんは「電車の中でワンカットのアクションやろうかな」なんて言っていて、本当にそれ出来んの?みたいな(笑)。既に活躍されている方って、制約も増えているけど、その分やっぱり余裕も出てきていると思うんです。でも今回はお金も時間も無い中で、昔に戻って、アイデアでどう乗り切るか、みたいなことを考えている。そうやってノリノリになっているベテランの方を見るのも、また面白いんですよね。

佳奈:そういった人たちの中でなにを自分が、言葉は悪いですけど、ぶちかましたら一番面白いかなってことはすごく考えます。

孝之:いいですね(笑)。ぜひ好きなことをやってください。

佳奈:はい!

孝之:でもひとつ、“PG12”っていうレーティングだけは皆さんに守っていただきたくて。

佳奈:あっ、そうですよね。

孝之:ええ。9作品ずつセットで上映するので、ひとつの作品に“R”がついてしまうと、ほかの8作品も全部、15歳以上じゃないと観られなくなってしまうんです。それはちょっと困るので、みんな一律にしようと。公募の方は、419作品の応募があったんですが、驚いたことに、その9割以上が2020年か2021年に撮った作品だったんです。なんかこんな世の中でも、みんなめっちゃ撮っていたんだなって!

佳奈:なにか残さなきゃ!って思ったのかもしれないですね。すごいな。

孝之:昨日はレンタルシアターで一気に12作品、2時間20分をまとめて観ましたけど、最後まで全然飽きなかったです。色もテンポも違うので、ずっと観ていられる。これはいけるぞ!と確信して。いろいろなプロデューサーから、「日本でオムニバスは絶対にヒットしない」と言われてきましたけど、それって結局根づいていないだけなんですよね。ただ僕ら、これをずっと続けるので。1年目に9作品ずつ4回上映したら、もうその時点で次の準備を始めるので、ずっと終わらない。つまり3か月に1回、常にオムニバスが上映されている状態になるわけで。そうすることで、オムニバスを観るってことにみんなが慣れていくと思うんです。

佳奈:自分がつくるのはプレッシャーですけど、観るのはめちゃめちゃ楽しみです。

孝之:ビックリすると思いますよ。マジでこんなクオリティの作品来るの!?みたいな。

佳奈:あー、本当に楽しみです!

山田孝之(やまだ たかゆき)

1983年10月20日生まれ。鹿児島県出身。99年デビュー。その高い演技力と圧倒的な存在感で、映画『電車男』『クローズZERO』、テレビドラマ『ちゅらさん』『WATER BOYS』『勇者ヨシヒコ』シリーズなど、数々のヒット作品に出演。人気コミックを映像化した『闇金ウシジマくん』は、ドラマが3シーズン、映画が4作製作されるまでの人気作に。またNetflixオリジナルシリーズ『全裸監督』では、AV業界の風雲児・村西とおる役に挑み、またも大きな話題を呼んだ。2019年に映画『デイアンドナイト』でプロデューサー、21年に『ゾッキ』で長編映画監督(竹中直人、齊藤工との共同監督)デビューも果たしている。現在、映画『はるヲうるひと』が全国公開中のほか、『全裸監督 シーズン2』がNetflixにて独占配信中。

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山田佳奈(やまだ かな)

1985年4月6日生まれ。神奈川県出身。レコード会社のプロモーターを経て、2010年、劇団「☐字ック」を旗揚げ。ライフスタイルが自由化された現代社会においてのコミュニケーション欠如や、大人になりきれない年齢不相応な自我に対して葛藤する人間を描く。2020年の劇団10周年に、所属俳優を持たずに山田佳奈作品の舞台制作を行う場として単身新体制になる。また劇団前期代表作である『タイトル、拒絶』を初長編映画として自ら監督。大きな話題となったほか、Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』の脚本なども手がける。36人の監督による短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS』に参加、2021年に全国公開される予定。初の書き下ろし小説『されど家族、あらがえど家族、だから家族は』(双葉社)が発売中。

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photo:平岩亨
hair & Make(山田佳奈):小川智子
edit & text:野上瑠美子

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