【Interview】Vol. 22 須藤蓮インタビュー<後編>監督からの愛と信頼が役者をパワーアップさせる――そう教えてくれた深田晃司監督の現場

文:西森路代
2021.08.05

渡辺あや脚本のドラマ『ワンダーウォール』、深田晃司監督の『よこがお』、そして宮藤官九郎脚本の大河ドラマ『いだてん』と、日本を代表するクリエイターたちの作品に立て続けに出演してきた俳優・須藤蓮。この夏、彼が自ら監督した映画『逆光』が公開になる。脚本を手掛けたのは渡辺あやだ。映画監督とはどんな居方をするものなのか、撮影に臨むにあたって須藤の頭にあったのは深田監督作品の現場で学んだ「本物」のあり方だった――。

— 渡辺あやさんをはじめとして、宮藤官九郎脚本の大河ドラマに、映画は深田晃司監督、舞台は鴻上尚史さんに永井愛さんと、日本を代表する作家さんとここまで短期間に仕事した人ってなかなかいないと思います。

僕自身、一緒に仕事をしてみて憧れを感じるのはクリエイターなんですよ。もちろん『いだてん』とかで会った俳優の方々、阿部サダヲさんとか、松坂桃李さんもすごかったけど、やっぱり監督の井上剛さんに憧れました。

— 松坂さんというと、渡辺あやさんのドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK)に主演したばかりですよね。

おもしろかったですね。「切れ味ありすぎて大丈夫ですか?」ってくらいでした。明確な悪者はいなくて、特に國村隼さんがすごかったですよね。一視聴者として見てただけですけど。悪役が描けているということは、より広い世界が描けている気がします。

— 國村さん演じる須田理事の最後の展開はかなり物議を醸しましたが、須藤さんはどうみられましたか?

俺はなんかぴんときたんだよな……。すごく対立してても、それは背中合わせなだけで同じ山を登りたいという点が一致していれば、必要な存在に成りうるかもしれない。組織の中で、「これがいい」という考えが一色だけになるのは全然良くないし、窮屈な世界だなと思って。いろんな考え方があって、いろんな側面から見てそれでも決断していかないといけないんだということが描かれてるなと思いました。そこまで世界を俯瞰して描いた上で、最後まで矜持を守り抜いているところがあの作品のすごさだと思いました。

— 確かに、それはありますね。深田さんとは『よこがお』で一緒に仕事してみていかがでしたか?

作品も人柄もめちゃめちゃ好きです。『よこがお』の現場で学んだことを、自分が映画を監督する上でも実践しています。映画監督の才能って、ある種暴力的なもので、それがかっこいいことだと思ってたんですよ。でも、深田さんみたいな人が本物なんだなと思えて。

— 私も深田さんに取材をすることがあるのですが、こんなに穏やかな人が、でも時に残酷なまでに人の深淵を覗き込むような作品を撮ることに驚いて、どういうことなんだろうと思っていました。

現場で圧をかければ、良い作品が撮れるわけじゃないということを明確に信じているんだと思います。それが1ミリもぶれてない。ある程度の緊張感はあるけれど、監督がそういう考えを一貫して持っていると、そこにいる人達も助け合えるんです。人に何かを強制してやらせるのではなく、何かを共に積み上げていくという考え方で現場を動かしたほうが生産的で、本当の意味で効率的なんだと学びました。

— そこに集まる役者さんも、みなさん脚本に対しての理解が深いのかなと思うところがあります。

深田さんは、愛があって俳優を信頼してくれていて、大声も出さないし、自分が嫌なことはさせないんです。そこにいる役者に、本当に「来てくれてよかった」と思ってくれている。最初の読み合わせの後、2カ月くらい準備期間があって、深田さんからは「ここからは役者同士が作り上げていってください」と言われていました。だから「役者としても、この人のためにも、いい芝居をやらないと」という気持ちになって、それぞれのレベルが上がったと思うんです。ある意味では、自分の責任を痛感して怖いと思うところでもありました。でも、そういう信頼が結果を生み出すことってあるんだなと、すごく勉強になりました。

— 以前、ラジオ『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)に深田さんがゲストとして出演していたとき、「即興力っていっても、現場でいきなり台本渡して『やってください』ということまで求められることはなくて、現場で必要なのはちゃんと脚本を読んで解釈して俳優と合わせて出す能力」であると言われていたのを思い出しました。

たまたま即興で零れ落ちるものが本物であることはあるかもしれないけど、まぐれや奇跡は続かないですしね。もともと僕はそういうものを信じていたほうだったけど、「違うな」と思うようになりました。監督をするときにも、突き詰めていないといけないなと。詰めていないところは、すべて粗になってしまうので。

— 監督としての次回作『blue rondo』が控えていますが、『逆光』の経験も活かされますよね。いつから撮ろうと思っていますか?

10月から撮ろうと思っています。『逆光』の経験から、照明にもっと力を入れようと思っています。『blue rondo』に関しては、「初期衝動で撮れたほうがよかったんじゃないの?」と言われることも多かったんですけど、『blue rondo』は90分の作品で、『逆光』は60分なんです。いきなり1本目で90分の構成はできなかったんじゃないかなと思います。だから、時期がずれて失われるものもあるかもしれないけれど、僕は初期衝動よりも、作品のクオリティが上がることのほうが重要と思ってますね。出てくれる俳優のためにもそう思います。そして『blue rondo』を撮ることで、監督として自立しないといけないなと思ってます。どんなに脚本が良くても、監督がダメだと映画はダメなんだとわかったので。

— 最初に映画を撮ろうとしたときに「俳優は脚本(の良し悪し)からは逃れられない」と感じていたところから、そこが一歩進むんですね。10月から映画を撮るためにも、『逆光』をたくさんの人に見てもらわないといけないですよね。

とにかく観てほしいですね。好みじゃない人はいるかもしれないけど、期待外れってことはないんじゃないかなと思います。試みとしてやってよかったねっていうのではなく、ちゃんと価値のある作品を20代のうちから見せていきたいです。『逆光』の現場は8割が20代で、そこに親みたいな感じであやさんと大友良英さんがいてくれました。本物の人たちと一緒にやれる機会は若い世代には貴重なことだし、その経験を通して自分も本物になりたいです。

— 試写などを通して、どんな反響がありましたか?

自分より上の世代の監督から「嫉妬した」とも言われましたし、若い役者も興奮してくれました。そういう意味では、エネルギーを渡していける作品になったんじゃないかなと思っています。

— 興奮してくれた若い役者さんは、どんな方なんですか?

今の自分の在り方には満足してなくて、自分たちでなんかやろうという気持ちを持っていて、でも器用にやれないところもあって――という、これからの人。そういう人に『逆光』は響いてました。でも、若い役者にそういう人は多いと思いますし、俺はその最たる感じです(笑)。

— お話を聞いていると、須藤さんは、自分で「これ」と決めたことに対しては決して不器用ではないのでしょうが、やりたくないことや気持ちがのらないことに対しての器用さはない感じがします。

かなえたい夢があるときは、なんとしてでも成し遂げたいし、頑張れます。

— そのためにこれから先、自分で道を作ることもしながら、いい作品にも出会ってほしいです。

映画以外にもいろんなことを思いつくので、表現の幅さえ決めなければ、たくさん出会いはあるんじゃないかと思います。

— 俳優として出るほうも期待してます。

自分の映画を見てクリエイターの方が興味を持ってくれたらいいですね。海外の若い監督とももちろんやってみたいし。最近は中国の映画に面白いものが多いんですよ。『春江水暖 しゅんこうすいだん』のグー・シャオガンとか、『ロングデイズ ・ジャーニー この夜の涯てへ』のビー・ガンとか。そういう感覚の監督がいたら、日本でも海外でも、全部出てみたいですね。

須藤蓮(すどう・れん)

1996年7月22日生まれ、東京都出身。大学在学中に「第31回MEN’S NON-NO専属モデルオーディション」でファイナリストとなり、2017年秋より俳優として活動を開始。2018年にオーディションでドラマ『ワンダーウォール』(NHK BSプレミアム)出演の機会をつかみ、同作で注目を集める。その後、NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』や映画『よこがお』などに出演。『逆光』『blue rondo』ではプロデューサー兼監督として資金集めから主体的に活動している。

Instagram

映画『逆光』

出演:須藤蓮 中崎敏 富山えり子ほか
監督:須藤蓮
脚本:渡辺あや
音楽:大友良英
企画:渡辺あや、須藤蓮
7月17日より広島県尾道市で先行公開後、全国順次上映中
(C)2021『逆光』FILM

公式サイト

【Interview】Vol. 22 須藤蓮インタビュー<後編>監督からの愛と信頼が役者をパワーアップさせる――そう教えてくれた深田晃司監督の現場

Photo:山本佳代子
Styling:高橋達之真
Text:西森路代
Edit:斎藤岬
※衣装協力:Foyer

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