【Interview】Vol.23「今の自分をすべて出せた」自信をくれた舞台を経て、小野塚勇人が進む先

文:西森路代
2021.08.20

「EXILEになりたい」と思ったサッカー少年が、俳優になった。劇団EXILE・小野塚勇人、28歳。『渡る世間は鬼ばかり2019』や『共演NG』など話題のドラマに出演するほか、今年はミュージカルにも出演し、活動の幅を広げている。順風満帆ではなかったこの道の始まりから、30歳という節目が見えてきた今考えていることまでを聞く。

— この連載は「歌舞伎町×俳優」をテーマにしているんです。小野塚さんは歌舞伎町には来られますか?

舞台をやってるときは稽古場所が新宿に近いことが多いので、コロナ禍以前は稽古帰りに一緒に出演する仲間たちと歌舞伎町で飲んだりすることはありました。

— 初めて歌舞伎町に来たときの記憶もありますか?

18歳くらいのときに初めて来て、『龍が如く』のまんまだって思って(笑)。ゲームで見ていた神室町と実際の歌舞伎町の位置関係が同じだ!って、興奮した思い出がありますね。

— 作品では、何か歌舞伎町に関連したものに出たことは?

『新宿スワン』に……出てなかったですね(笑)。新宿に映画を観に来ることはありますよ。MX4Dの映画は、歌舞伎町じゃないと観れないものもあるので。マーベルとかアクション系の映画はなるべくそういう映画館で観たいので、新宿に来ますね。

— 今回はあらためて、小野塚さんが劇団EXILEで活躍されるまでの話も教えてください。劇団に入るまでには、どういう経緯があったんですか?

僕の場合、芸能人になりたいとか俳優になりたいとかじゃなくて、「EXILEになりたい」っていうのが大きかったんですよ。調べたらスクールがあるとわかって、最初は月謝を払ってEXPG STUDIO(LDHが運営する育成スクール)に通うことになりました。

— 最初はということは、しばらくしたらまた違ってくるんですか?

EXPG STUDIOの中で特待生オーディションがあって、一緒に通ってた子から「受けようよ」って誘われて。僕は「まだそんなにいろんなことができてないからいいよ」って断ってたんですけど、「経験になるから」ってことで受けたら、特待生にしていただきました。そこからは、週に5〜6回、学校が終わった後にボーカルとダンスのレッスンを受けに行く生活が始まりました。

— そこからすぐに事務所入りしたわけではないんですよね。

特待生になったのが16か17の頃で、所属になったのが19歳くらいなので、3年くらいかかりました。その頃のLDHはオーディションが盛んで、三代目J SOUL BROTHERSやGENERATIONSができた時期だったんですよね。一緒にレッスンを受けてた人たちがどんどん所属になっていくのを見て、もどかしさは感じていましたね。

— 2010年の「VOCAL BATTLE AUDITION 2」の頃のことですね。小野塚さんが所属になったのは、舞台『あたっくNo.1』がきっかけなんですよね?

劇団の舞台のアンサンブルやアンダーとして出させてもらってて、2012年、19歳のときに『あたっくNo.1』のオーディションを受けて演出の樫田(正剛)さんに拾ってもらった感じです。そのときはまだ劇団EXILEに入ることは決まってなかったけど。

— 『あたっくNo.1』の後に劇団EXILE入りが決まったわけですね。同期がSWAYさんと八木(将康)さんで。

厳しい稽古に三人で耐えて大阪で大千秋楽を迎えた後、打ち上げにHIROさんも来ていて、そこで知らされました。いまだに覚えてますけど、だんだんと場の空気が真剣な雰囲気で静かになっていって、「説教されるのかな」と思ってたら、HIROさんの口から「八木君、SWAY君、小野塚君は、明日から劇団EXILEとして活動してもらいます」って。交通事故とかにあった瞬間って、時間がゆっくり動くって言うじゃないですか、そんな感じで、その瞬間、ゆっくり時間が動いてました(笑)。

— 決まって「おっしゃー!」みたいな感じではなかったんですね(笑)。

稽古が大変でそこから解放されて、明日からはいちEXPG生に戻るか、もしくは俳優として別の事務所でやっていこうかなってぼんやり考えてたんです。そのときはもう、LDHには僕が入る隙はないと思っていたので。「この舞台で良い経験させてもらったし、次からは別の形で俳優をがんばってみよう」と思ってたんです。でも、HIROさんから劇団EXILE入りを告げられたときは、三人とも坊主頭で号泣しました。

— もともと抱いていた「EXILEになりたい」という気持ちは、どこから芽生えたんですか?

高校がサッカー推薦で決まって、中3の夏休みをお祭りやプールに行ったり、カラオケ行ったりと満喫してたんです。それまではサッカーの練習ばっかりでそんな時間なかったんだけど、そのカラオケでEXILEを歌ったら友達から「うまい」って褒められて。それで「マジで俺いけるかな?」と思い始めました。その後、高校に入ってサッカーをやってたけど、もしかしたらそこから逃げたいという気持ちもあったのかもしれない。ほかの道を探したいと思い始めてて、そのときにEXILEを目指してみるか、って。周囲には「そっちのほうが厳しいよ」とか言われたけど、そう言われると天邪鬼なので挑戦したくなって。

— 実際にはどうでしたか?

体力的な厳しさはないけど、芸術の世界は答えがないし、そういう意味では厳しいですよね。いまだに何が正解かわからないし。地元では「歌がうまい」って言われてたけどEXPGに入ったら上には上がいるし、自分よりかっこよくてダンスもできる人もいて、「なんじゃここは」って感じでしたね。

— HIROさんに初めて会ったのはそんな時期ですか?

「VOCAL BATTLE AUDITION 2」のときですね。一次試験会場で、HIROさんもATSUSHIさんもいて。オーラがすごかったです。当時、オーディションを受けにくるダンサーさんってHIROさんみたいな髪型や服装の人がいっぱいいて、そういう人を見るたびに「あ、HIROさんだ」って間違えたりしてました(笑)。

— 特待生として過ごす中で、ボーカリストではなく俳優にも視野を向けるきっかけはあったんですか?

「ボーカリストになりたい」と頑固になってたとき、EXPGの校長先生に「入口が俳優でも、歌ってる人もいるでしょ? まだ17歳だから視野を狭くしないほうがいいよ」って言ってもらいました。そこから、いろんなことにチャレンジしようかなと思い始めて、演技の現場やPVの撮影に参加するようになって。完全に変わったのは、やっぱり『あたっくNo.1』ですね。真剣にやってる人たちの中で、「歌の表現力をつけるために俳優もやってみる」というメンタルではいけないなと思い始めて。

— 樫田さんの稽古がとても厳しいものだということは、以前のインタビューでもお聞きしましたね。(「Real Sound」2019年2月21日掲載「劇団EXILE 小野塚勇人×八木将康、同期として切磋琢磨する日々『互いに成長できる関係でいたい』」)

俺は10回くらいは樫田さんのお芝居を経験しているんですけど、最初のほうは怒られて落ち込むことしかできなかったのが、今は怒られたら「言われたことを超えてもっと面白くさせてやるよ!」って思えるようになりました。反骨精神が強くなりましたね。俺にだって経験してきたものがあるから。でも、樫田さんとは事あるごとにLINEでやり取りしているし、あるときは「勇人は俺の秘密兵器だ」って言ってもらったし、本当にお父さんみたいな存在です。

— 今はほかの現場で怒られることはあるんですか?

ほとんどないですね。時代的にも言わなくなってることのほうが多いです。俺は怒られながらやってきたので、何か納得いかないままOK出されるよりは、できてないところを言ってもらって、それに対しての意見交換をしたいと思うほうではありますね。アツいほうが仕事として楽しいです。

— 今年はミュージカル『INTERVIEW〜お願い、誰か僕を助けて〜』に出られて、「いつか歌の仕事があるかも」という思いも叶ったのではないかと思います。

今までのお芝居の経験が活かされて、その上で歌がある仕事だったし、演出家の田尾下哲さんが24時間体制でLINEでも相談にのってくれて。深い脚本なので、自分で解釈した部分を「合ってますか?」って聞いたり、僕が1人で6役を演じるにあたって「こんなふうに演じたらキャラクター同士が似てしまいますかね」とか相談したりしてました。田尾下さんは、「舞台に出るまでにストレスがないようにしたいから」ということで、「夜中でも連絡ください」と言ってくれてたんです。Team RED/Team BLUEのダブルキャストだし、練習時間も毎回短くて、通し稽古をやってダメ出しをしたら、そこからさらにもう一回やってみるということができなかったんですよね。だからLINEで相談できたのは本当にありがたかったです。

— そういう解釈を重ねる苦労ももちろん伝わると同時に、歌がすごく難しいメロディだし、あの熱量で6役を演じるということでメンタル面も大丈夫かなと思いました。

今までに聞いたことのないメロディなので、ほんとに難しかったです。でも、曲は早めにもらっていたので、稽古に入るまでに体に入れておこうと思ってました。稽古では、どう表現するかってところに時間を使いたかったので。メンタルに関しては、結構心配してもらいました。でも、ずっと作品のことは考えているけどその人格に影響されたりはしないので、そこは意外と大丈夫でした。

— 観に行った人はみんな、小野塚さんの演技のすごみに圧倒される舞台でした。

自分の中での代表作ができてよかったです。劇団EXILEの先輩の秋山(真太郎)さんとか、関係者のみなさんが褒めてくれたし、こんな状況の中でもやりきれたことにも自信が持てました。今の自分に出せるものをすべて出せたと思うので、やってよかったですね。

— 最近では、事務所の後輩の前田拳太郎さんが『仮面ライダーリバイス』(テレビ朝日系/2021年9月〜)に抜擢されました。LDHのライダーの先輩としてはいかがですか?(2017年放送『仮面ライダーエグゼイド』にて九条貴利矢役)

彼のポテンシャルがあってオーディションに受かったんだろうし、前田くんは空手の有段者で背も高くて、殺陣なんかにもそのあたりが活かされるんじゃないかなって思います。僕は事務所のアクション稽古のときに一回会ったくらいかな。今度の『仮面ライダー』も、題材も面白そうだし楽しみです。前田くんは主役だし、監督の言うことを聞いて、固くなりすぎずに、自分の魅力を出していけば、きっといいものになると思います。僕にとっての『仮面ライダー』は、家族みたいであり役者同士の仲間意識もできるので、青春ですね。ただ、最近、舞台『TXT vol.2「ID」』で、『仮面ライダーゼロワン』の砂川脩弥くんと一緒になってその話になったんですけど、今の変身シーンってめっちゃかっこいいんですよ。俺のときと全然違うんじゃないかってくらい。だから、「よく人気が出たな」って自分を讃えました(笑)。

— その人気って、なぜ出たんだと思いますか?

まさか自分が仮面ライダーになれるなんて思ってもいなくて、思い出作りみたいなところもあったんです。「変身できるしうれしいな」って。僕の役は途中で死んでしまうんですけど、その放送日がクリスマスですごくタイミングもよくて。その後すぐに「英雄祭」ってイベントが武道館であったんですけど、役が亡くなったという余韻のある状態だったんで、俺が舞台に出て行ったときの武道館の揺れ具合、すごかったですよ(笑)。あれはいい思い出です。

— そして、8月からは劇団EXILEが総出演するドラマ『JAM -the drama-』が始まります。もう撮影は済んでいるんですか?

無事に終わりました。話としては映画(2018年公開『jam』)のその後になるんですけど、ドラマだけ観てもわかるようになっているし、でも映画を見たらよりわかるようになっています。SABU監督の遊び心が全開で、ふざけてるけど、変に小さくまとまるよりも振り切ってて面白いんじゃないかと。台本を読んだとき、「このままは撮影しないでしょ?」と思ってたら、本番もそのままいくんだって思ったくらいでした。全8話で、とんでもない展開になってます。

— 小野塚さんの役はどうなっていくんでしょう。映画では事務所のチンピラの一員でした。

もともとは秋山さん、将康さん、小澤(雄太)さんと同じ事務所のチンピラだったんですけど、秋山さんと将康さんは交通事故で辞めちゃって、俺と小澤さんが事務所に残る形になってて。みんなバラバラになってたけれど、あるときからまた偶然会ってつながりだして、全員がひとつに集まって、そこから物語が進み始めるんです。集まってからの展開がすごすぎて……。

— ドラマの予告映像では小野塚さんたちが歌って踊っているシーンがあって、映画版からすると「そんな方向に進むのか!?」と思いました。

要は俺と秋山さん、小澤さん、将康さん、(佐藤)寛太の5人が集まって歌ったり踊ったりするんですけど、とある事情でダンスを練習したりして。ダンスの講師役も面白いし、僕らの髪は青になったりピンクになったりします。しかも、ヒューマンドラマから始まって友情が描かれて、途中からオカルトになったりSFになったり、アクションも歌もあって。もう全部入ってますね。

— 舞台『勇者のために鐘は鳴る』(劇団EXILE全メンバー出演&原案プロデュース作。2020年1〜2月上演)のことなんかも思い出しますね。

『勇者』もなんでもありだったんですけどあれはゲームの世界の話で、今回は現実の中でなんでもありなので。みんな、誰もふざけないで真面目にやってるのも面白いと思います。

— みんなが大好きな昌子さん(演:筒井真理子)がどうなるのかも気になりますね。

映画版でやってましたけど、筒井さんに“人間ロケット”させるのはSABUさんくらいですからね。

— あと、そういう無茶苦茶なシーンも醍醐味だったので、映画版で亡くなった方もいたのかと思いきや……。

そうなんですよ(笑)。今回のドラマで、奇跡的に、無理やり、みんなよみがえって。僕は完成前のつながったものを見せてもらったんですけど、本当に笑えるし面白かったですね。とにかく全部のっかってるので、本当に「JAM」っていうのは言い得てます。瓶に詰め込んでぐちゃぐちゃになってる状態です。

— 楽しみです。じゃあ最後に。近年特に充実した仕事ぶりなのがうかがえますが、これから30歳になるまで、どんなことをすべき時期だと思っていますか?

30歳になるまであと2年で、今年は可能性を広げたいと思ってミュージカルをやってみて、手ごたえがあったのでまずは良かったです。今までのスタンスを崩さないで、その上でミュージカルにもまた挑戦したいし、体が動く若いうちにアクションもやりたいと思ってます。30歳までの方向性を考えたときに、何かひとつの方向に寄せたほうがいいのかとも思ったんですけど、いろいろやってみて、なんでも全部やれることはやってみるのがいいんじゃないかって思いました。そのくらいが楽しいし、凝り固まらないで、楽しんでやってる中で何か見つけることを、30代までの準備にしようかなと思ってます。

小野塚勇人(おのづか・はやと)

1993年6月29日生まれ、千葉県出身。俳優。主な出演作にドラマ『橋田壽賀子ドラマ 渡る世間は鬼ばかり 3時間スペシャル2019』(TBS)、『特命刑事 カクホの女2』『共演NG』(共にテレビ東京)、映画『HiGH&LOW』シリーズ、『恋のしずく』『jam』『GOZEN -純恋の剣-』『いけいけ! バカオンナ〜我が道を行け〜』、舞台『勇者のために鐘は鳴る』など。
また、現在NHKにて毎夜放送されている深夜のイッキ見!まつり『#天空のシェアハウス』、テレビ東京のドラマ『家、ついて行ってイイですか?」第4話に出演する。

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『JAM -the drama-』

出演:青柳翔、町田啓太、鈴木伸之、佐藤寛太、SWAY、秋山真太郎、八木将康、小澤雄太、小野塚勇人、清水くるみ、清水葉月、恒松祐里、筒井真理子
特別出演:八代亜紀、純烈、EXILE NAOTO
監督・脚本・編集:SABU
エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
放送:8月26日より、ABEMA SPECIALチャンネルで毎週木曜22時〜(全8話)
(c)JAM -the project-

劇団EXILE公演「JAM -ザ・リサイタル-」

出演:劇団EXILEほか
脚本・演出:川本成
2021年10月スタート
(c)JAM -the project-

公式サイト

【Interview】Vol.23「今の自分をすべて出せた」自信をくれた舞台を経て、小野塚勇人が進む先

Photo:越川麻希(CUBISM)
Styling:矢羽々さゆり
Hair&Make:KOHEY
Text:西森路代
Edit:斎藤岬

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