【Interview】Vol.34「同じ歌でも、私が歌えば違うものになる」新主演・詩羽を迎えた水曜日のカンパネラが教えてくれる“芯” な部分<後編>

文:ナカニシキュウ
2022.03.17

2021年9月、初代ボーカリスト・コムアイの脱退を受けて2代目・詩羽が電撃加入した水曜日のカンパネラ。今年2月に新体制での2ndシングルとなる『招き猫/エジソン』をリリースし、4月には「CONNECT歌舞伎町2022」への出演も決定している。水カンにとっての歌舞伎町を聞いた前編に続き、後編では新体制移行の経緯からこれからの展望まで、詩羽、Dir.Fの2人に思う存分語ってもらった。

これ、私が思ってるよりも大きい話だな

— そもそも、コムアイさんの後任に詩羽さんを選んだのはどういう理由だったんでしょうか。

Dir.F:肝が据わっているというのもあるんですけど、水曜日のカンパネラは詞曲をケンモチ(ヒデフミ)さんが作るという前提があるので、主役として立つのは芯のある人、自分の中にしっかり言葉やメッセージを持っている人じゃないと向いていないなと思っていて。それが彼女にはあったので、スカウトに至りました。

— どうやって詩羽さんを見つけたんですか?

Dir.F:周りの何人かに「こういう子を探しています」というのを話しつつ、自分でも探していたんですけど、ある人が詩羽のInstagramを紹介してくれたんです。そこでしっかり“自分”を持った投稿をしているのを見て「すごく合いそうだな」と思ったので、1回会って話をしてみたいなと。

詩羽:最初にDMをもらった時点では水曜日のカンパネラの件だとは伝えられていなかったんですけど、新しいことにいろいろ挑戦したいタイプなので、なんの話かもわからないままとりあえず行って。それで、3回目くらいに会ったときに水曜日のカンパネラの話をされたので、その場で「やりまーす!」と返事しました(笑)。

— すごい話ですね(笑)。そこで「やれる」という確信があったわけですよね。

詩羽:そんなに深くは考えてなくて(笑)。「なんでもやってみよう」というスタンスが大事だなと思ってるので。

— Dir.Fさんとしても、ある意味では詩羽さんの人間性以外の部分は未知数だったわけですよね。

Dir.F:「声も聴かずによくスカウトしたね」とよく言われるんですけど、一応インスタで歌っている動画も観てはいたんですよ。ケンモチさんもそれを聴いた上で「いいっすよね」と言っていましたし。ただ、ライブはちょっと不安というか、「どうなるんだろう?」というのはあったんですけど、高校のときにバンドをやっていたというのを聞いて、じゃあステージは大丈夫かなと。

詩羽:高校のときに3年間、部活としてバンドでギターボーカルをやっていたんです。バチバチの邦ロックをコピーしてましたね。WANIMAとかKANA-BOONとか、KEYTALKとか。ガールズバンドだとSHISHAMOの曲とかも。なので、ステージで歌うということ自体は高校の3年間で経験していたんです。歌うことに抵抗がなかったのは、今につながるものとして大きかったかもしれないですね。

— ただ、当時は「音楽で生きていこう」という感じではなかったと。

詩羽:なかったです。音楽は趣味として好きなときにやるけど、バンドはもういいかなって。

— いわゆる邦ロックがずっと好きだったんですか?

詩羽:いや、とくに何が好きっていうこだわりはなくて。本当に広く、「邦ロック含めJ-POP全般が好きです」と言ったほうが早いかなっていうくらい、わりといろんなものを聴くようにはしていました。その中で、「バンドでやるならロックかな」くらいの感じで邦ロックをコピーしてたんだと思います。

— では、水曜日のカンパネラ的な音楽をやるにあたっても違和感などはなかったんですね。

詩羽:そうですね。水曜日のカンパネラ自体は小学校か中学校くらいのときに流行っていて知っていたし、自分でもハマって聴いていた時期もあったので。

— ということは、水カンへの加入には「好きで聴いていたアーティストの一員になる」という意味合いも加わるわけですよね。そこに臆せず入っていけるメンタルは相当なものだと思います。

詩羽:「やります」と返事したときは「やったー!」くらいの気持ちだったんですけど、家に帰って1人になったときに水曜日のカンパネラのことを改めて調べてたら、「これ、私が思ってるよりも大きい話だな……」というのがズーンと来ましたね(笑)。ただ、そこで「ヤバい、どうしよう」というよりは「なんとかなるっしょ」って感じで、考え込んだりはしなかったです。もちろん、「自分が水曜日のカンパネラになるんかー」という、ふわふわした気持ちはありましたけど。

— 今は「水曜日のカンパネラの詩羽です」と自信を持って言えるようになりました?

詩羽:そうですね、「言えるくらいちゃんとやろう」という思いもあるし、ちゃんとやっているんですけど……、今までとそんなに変わらない感覚もあるんですよ。以前と今で線を引くというよりは、延長線上に今があると思っているので。「そんなに変わってないよ」というのは出し続けたいですね。

フロントマンが変わっても、変わらないものでいられる

— グループの“顔”であるところのボーカリストを変えながら続けていくというスタイルが、個人的にはサディスティック・ミカ・バンドみたいでカッコいいなと思います。

Dir.F:それ、別のところでも言われました(笑)。コムアイが脱退するとなったときは「彼女は彼女でやりたいことがあるなら、そっちに全力で漕いでいってほしい」という思いがあって送り出したんです。ただ、そこで「こっちの船をそのままにするのもなあ」と思いまして。今はインターネットの時代ですし、YouTubeのチャンネル登録者とかSNSのフォロワーとかも残るじゃないですか。そういう人たちの今後をどうするのかとか、これがずっとネット上に浮遊しているのもどうなのかなとか。そこで、代わりに乗ってくれる船長がいるなら、その人ともう1回やってみたいなと。

— 形にこだわるのではなく、表現すべきことにこだわるということですよね。

Dir.F:そうですね。

— マンガで言うなら『キャプテン』に似た手法と言える気がします。どんどん個性の違う主人公に変わっていっても、作品としては一貫性があるという。

Dir.F:『ジョジョの奇妙な冒険』とかもそうですよね。何かしらの血筋が生きていれば、フロントマンが変わってもファンにとっては変わらないものでいられるんじゃないかな。

— そういう意味での詩羽さんの素晴らしいところは“偽コムアイ”をやろうとしていないところだと思うんです。

詩羽:たしかに、やろうとはしていないですね。できないですし。

— ちゃんと“別物”としての魅力を提示しているからこそ、水曜日のカンパネラとして違和感なく聴けるんだろうと思います。

詩羽:“違いを出す”ということをとくに意識はしてないです。同じ歌でも、私が歌えば違うものになると思っているので。

— 並の人だったら“偽コムアイ”を目指しちゃうと思うんですが。

詩羽:似せたりマネしたりすると、中途半端になっちゃうから。それだと成り立たないし、自分が楽しめないポイントにもなると思うので、結局“自分らしく”というのを一番大事にしていますね。例えばライブでの振付の中には、コムアイさんがやっていた振付をそのままやっているものもあるんですけど、「それを私がやりたいかどうか」で選ぶようにしています。先代からのファンで今もライブに来てくれる人もいるから、そういう人たちと一緒に楽しむためには以前の要素もポツポツあったほうがいいと思うし、完全になくしちゃうのも面白くないかなって。

Dir.F:「コムアイのときはこうしてたよ」というのを伝えるようにはしてるんですけど、「それをそのままやれ」ということではなく、あくまで事実としてそうだったと知っておいてほしいだけなんです。知らないよりは知っていたほうがいいし、知らないと選ぶこともできないので。

— 詩羽さんとしては、「核の部分さえブレなければ、ガワをいくら借りてきても大丈夫」という自信があるわけですね。

詩羽:そうですね。自信あります!(笑)

Dir.F:コムアイにせよ詩羽にせよ、ちゃんと自分のメッセージを持っている人なので、そこを貫けるようにこっちがフォローすることが大事だと思ってやっています。なので、詩羽に対しては「コムアイを意識してほしい」とも、「してほしくない」とも言っていないんですよね。詩羽がそのまま表現できたほうが、新生カンパネラとしても絶対にいいんで。

「招くんだ!」という思いで歌っている

— 水カン楽曲の最大の武器は、音はもちろんなんですけど、やはり歌詞だと思うんです。「ずっと何言ってんだ?」というものが多いですよね(笑)。

Dir.F:ははは(笑)。

— 取って付けたようなメッセージ性を持たないところが、一般的なJ-POPとは一番違うスペシャルな部分なんじゃないかなと。

Dir.F:結成当初からケンモチさんとよく言っているのは、「女性ボーカルが歌う歌詞を、本人の思いみたいなテイで書いたりすることはできない」ということなんですよ。

— それは例えば、「恋する女性の気持ちをつづったような歌詞をケンモチさんが書くというのはどうなんだ」というような?

Dir.F:はい。で、そもそも「人名をタイトルにしよう」と言い出したのはコムアイなんですよ。ひとつの人名を歴史的に掘り下げて「その人が現代を生きていたら」という“if”の世界を描くようになったのが、ケンモチさんの作風になっていったんだと思います。たぶんコムアイ本人にも「恋愛を歌いたい」みたいな気持ちがなくて、たまたま両者の思惑が合致したというか。

— なるほど。詩羽さんには「ラブソングを歌いたい」という思いはあるんですか?

詩羽:ラブソングを歌いたいと思ったことは一度もないですね(笑)。毎回、新曲の歌詞を見るたびに「ほかにないような歌詞で面白いな」って思います。

— 「こういうのこそがカッコいいんだよ」という思いで歌っている?

詩羽:カッコいい……、いや、私の中では「面白い」ですね(笑)。

Dir.F:わははは(笑)。

— ただ、そのわりには「面白い」で歌っているようには聴こえないです。ちゃんとカッコいいものとして聴こえてきます。

詩羽:そうですね……。ただ、「カッコいい曲だからカッコよく歌おう」とか「面白い曲だから」「かわいい曲だから」で歌うというよりは、曲の中で描かれているキャラクターに自然と寄せている感じですね。例えば『招き猫』だったら招き猫の気持ちになって、「招くんだ!」という思いで歌っている気がします。設定としては不思議な世界観なんですけど、1曲1曲の主人公に愛着が湧くので、歌うときに自然とそのテンションになるんだろうなって。

— この世界観にすんなり入り込めるという時点で相当すごいことですよね。

詩羽:ほかと違うからって変なわけじゃないし、「私はこれが楽しいんだよ」というのを見せられればいいのかなって。私はそんなに深く考えてはいないんですけど、それを見せ続ければ違和感が違和感じゃなくなるのかなと思います。ほかの人とズレているところがあるのは普通のことだし、「それが私にとっての普通だよ」というのを押し続けたい。そこは変えたくないなと強く思います。

— 水カンは国内のみならず海外のファンも多いですよね。海外の人たちに歌詞の魅力が伝わりづらいことに関してはどう考えていますか?

Dir.F:実は以前、イギリスのコーディネーターの方が『アリス』をすごく気に入ってくれて、自主的に英語版を作ってくれたことがあるんですけど、聴いてもあまりピンと来なくて(笑)。やっぱり詩羽の歌声だったり、日本語での語感やイントネーションだからいいのかなと思ったんです。そこの文化の壁は感じましたね。BTSがアメリカで成功したのも英語で歌ったことが大きな要因のひとつだと思うんですけど、カンパネラの曲は歌詞の内容も含めてちょっと日本語の言葉選びが特殊すぎるので、それを単純に英語化するのは難しいなと。

— 『エジソン』の<踊るエジソン ジソン心>とか、めちゃくちゃカッコいい歌詞だと思うんですけど、これを例えば<Dancing Edison, self-esteem>のように単純に英訳したら、まったく意味がなくなっちゃいますもんね。

Dir.F:ふふふ(笑)。

— “メッセージ性のなさ”は武器でもあり、弱点でもあるというか。

Dir.F:そのまま“日本のもの”として「面白い!」と受け入れてもらえるような土壌を、こっちから作っていかないと難しいでしょうね。そこがK-POPとは事情が違うところなのかなと。さらに韓国では国が海外進出を支援したりしているじゃないですか。日本だとそこはまだまだなので。

詩羽:私は海外に行ったことがないんで想像できないところが多いんですけど、日本だけじゃなくて海外にも楽しんでくれる人がもっと増えたらいいなという思いはあります。海外でもたくさんライブしたいです!

2022年2月25日「招き猫/エジソン」

水曜日のカンパネラRELEASE PARTY〜LET’S PARTY2〜

2022年4月6日(水)
タイトル:LET’S PARTY 2
場所:clubasia
開場/開演:19:00 / 19:30
チケット:¥3,500(ドリンク代別)
一般発売:3/16(水)10:00〜
https://w.pia.jp/t/wed-camp/

水曜日のカンパネラ(すいようびのかんぱねら)

2013年からコムアイを主演歌唱とするユニットとして始動。メンバーはコムアイ(主演)、ケンモチヒデフミ(音楽)、Dir.F(その他)の3人だが、表に出るのは主演のコムアイのみとなっていた。2021年9月6日にコムアイが脱退、新しく主演/歌唱担当として詩羽が加入し、新体制での活動がスタート。同年10月27日に新体制後の新曲『アリス/バッキンガム』をリリース。
12月8日(水)にWALL&WALLで開催した新体制初の主催リリースパーティー<LET’S PARTY>は一般発売後数分でSOLDOUT。
2022年2月25日には詩羽体制2度目の2曲同時リリースで「招き猫/エジソン」をリリース。4月6日(水)にはclubasiaで再びリリースパーティー<LET’S PARTY 2>を開催。

CONNECT歌舞伎町2022

開催日 :2022年4月29日(金・祝)
開場  :12時
開演  :13時~22時 ※タイムテーブルは後日発表
会場  :新宿BLAZE / 新宿LOFT / MARZ / Marble /Zirco Tokyo / shinjuku SAMURAI
主催  :コネクト歌舞伎町実行委員会 / 歌舞伎町商店街振興組合

公式サイト
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前売りチケット
◇前売り券  4800円
◇当日券   5500円 ※フェスティバル当日に指定の窓口で販売。詳細は後日発表。
e+ チケット販売ページ

※新型コロナウイルス感染症拡大防止対策については、本フェス開催の1ヶ月前に、その時節に適用されているガイドラインに準じた対策を発表します。

【Interview】Vol.34「同じ歌でも、私が歌えば違うものになる」新主演・詩羽を迎えた水曜日のカンパネラが教えてくれる“芯” な部分<後編>

text:ナカニシキュウ
photo:落合由夏

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