【Interview】Vol.36「バイブスと言うより、カルマ。ミクスチャーではなく、混沌。それが歌舞伎町」 石野卓球インタビュー

文:張江浩司
2022.04.19

説明するのも野暮ではあるが、電気グルーヴのメンバーであり、世界有数のテクノDJでもある石野卓球。4月29日に3年ぶりの開催となる、歌舞伎町一帯のライブハウスを使ったサーキットイベント「CONNECT歌舞伎町2022 」にも出演する卓球は、電気グルーヴの前身バンド「人生」のころから新宿のライブハウスには縁が深い。
80年代後半からの卓球のキャリアに沿って歌舞伎町を見ていくと、この街の本質が浮かび上がってきた。

歌舞伎町はカルマが違う

— 「CONNECT歌舞伎町」には毎回出演されていますね。

主催者の(柴本)新悟くんがDr.Shingoという名前でDJをやっていて、20年前くらいから知り合いなんですよ。お互いの曲をミックスし合ったり、一緒にDJをやる機会も多くて。で、気がついたら彼が歌舞伎町一帯でイベントやるから出てほしいと。友達からのオファーだったんで話は早かったですけど、全然知らない人から「歌舞伎町でイベントやります」って言われたら怪しんでたかもね(笑)。

— 警戒しますよね(笑)。初開催の2014年には歌舞伎町のど真ん中、シネシティ広場でDJされました。

すごかったですよ。サイケデリックな体験っていうか。何度も通行人としては行ったことあるけど、あの場所でDJするとは考えもしなかったし。
ドイツのラブパレード(2010年まで開催されていた世界最大規模のレイブ)でDJやったときに「日本でもこういう街中でやれるイベントがあればいいのに」と思ったんですよ。でも、日本だと100歩譲っても郊外の公園とかじゃないと無理かと思ってたら、まさかあそこで(笑)。ヨーロッパだと街に広場があるんですよね。でも東京にはほとんどないじゃない?渋谷のスクランブル交差点とかも、広場ではないし。まさにあそこは広場で「そういえばここがあった!」っていう。

— シネシティ広場から溢れかえるくらい人が集まっている光景もすごかったですよね。

印象深いですよ。現実が妄想を超越してるような眺めっていうか。「本当にここは新宿の歌舞伎町なのか?」って。それが歌舞伎町っぽいんだよね。他の街と全然違うじゃない、街が持ってるカルマが。バイブスと言うよりもカルマ(笑)。

— ハロウィンでスクランブル交差点に人が集まってるのとは意味合いが違うというか。

そうそう、渋谷とはカルマのレベルが違うっていうかさ。渋谷はカラッとしてて現代的なんだけど、歌舞伎町は過去から脈々とつながる街の歴史がある。昔悪かった先輩が今はだいぶ丸くなったけど、たまに睨まれたらすげえ怖い、みたいな(笑)。

— 2回目以降は新宿BLAZEのトリに出演されてますが、フロアの雰囲気はいかがですか?

いろんなジャンルが混ざってるようなイベントは他の街でもやってるけど、CONNECTは街の雰囲気もあってさらにゲットーな感じですかね。単なるミクスチャーっていうよりも混沌って感じで。カオスじゃなくて混沌。カタカナに出来ない感じ。

オールスタンディング800名のライブハウス「新宿BLAZE」前にて。

新宿で過ごしたクラブシーンの“青春”

— 卓球さんが最初に出入りするようになった新宿のライブハウスは、歌舞伎町に移転する前の新宿LOFTですか?

そうですね。80年代後半、18歳のときに上京して、「人生」でライブハウス中心に活動してたときに一番出たのが新宿LOFTだから、ホームグラウンドみたいなもんだし、思い入れもあるしね。
当時住んでたのが京王線の笹塚だったから、何をするにしても新宿が中心だった。ライブもそうだし、レコード買いに行くにしても。90年代に入ると渋谷がレコードの中心になるけど、その前は西新宿にブートとか海賊盤売ってるレコード屋がいっぱいあったじゃないですか。来日した外タレが自分の海賊盤を喜んで買っていくっていう、おおらかな時代だよね(笑)。新宿JAMとか新宿ACBホールとかにも出てたし、20代前半までは新宿で活動してたイメージが自分でもあるかな。

— 当時の新宿のシーンはどんな雰囲気だったんですか?

渋谷とかはポップスのもう完成された人たちが出るライブハウスがあった感じなんだけど、新宿はもっとハードコアパンクっていうか、緊張感あるし喧嘩もあるし。ライブ観にきてるんじゃなくて喧嘩しにきてる人たちもいたからさ(笑)。LOFTくらいのキャパで、異端のバンドを受け入れてくれるライブハウスって他になかったんじゃないかな。電気グルーヴで最初にライブしたのもLOFTだったし。

— 今もLOFTのアニバーサリーイベントなどには出演されてますよね。

呼んでもらえるのはありがたいですよ。母校に呼ばれるみたいな。当時を知ってるスタッフはさすがにいないから、先生たちよりも年上になっちゃったって感じだけど(笑)。なんか落ち着くよね。ステージの市松模様もずっと変わらないでしょ。あれは「鬼滅の刃」よりも早かったよね(笑)。

— 1994年には新宿LIQUID ROOMが歌舞伎町にオープンします。

新宿リキッド(新宿LIQUID ROOM)のプレオープンでDJやったんですよ。アンダーワールドとドラム・クラブと一緒で、オープンしたてだからなのか、空調が壊れちゃってとにかく暑かったのを覚えてる。ライブハウスとかクラブとか、新宿から渋谷に音楽の中心が移ってた時期だったから、新宿にリキッドができることで流れがまた変わるかなと思いましたね。

— 2004年に恵比寿に移転する前、最後のイベントでもDJされてますね。

リキッドは自分のキャリアにとってもすごく大事な場所というか。日本のクラブシーンの黎明期でもあって、いろいろ試せたし、海外からDJを呼んでイベントやるにしてもベストな場だったんですよね。
六本木とか麻布にもクラブはあったけど、そっちはあくまでもクラブって感じでライブハウスとははっきり棲み分けされてたんだけど、リキッドは中間でどっちもありだった。ロックとダンスミュージックの中間みたいな音楽が認知され始めた時代にもぴったり合ってたよね。ライブハウスしか行ったことがない人もクラブに行き始めた時代っていうか。クラブシーンの青春みたいな。

— そのなんでもありで雑多な感じが歌舞伎町っぽいですね。

そうそう、歌舞伎町のカルマ(笑)。混沌感ね。あくまでも印象だけど、当時のリキッドを知ってる人は全員同意してくれると思う。エレベーターでうんこしちゃってるやつとかいたから(笑)。
あと、クラブイベントって週末の深夜に始まるじゃない。あのころの歌舞伎町のど真ん中で深夜ってなると、もう歌舞伎町が正体を表すっていうかさ。

— 今と違って怖い人がいっぱいいたと(笑)。

リキッドに着くまでが大変(笑)。目立たないように、みんな新宿駅からずっと下むいて歩いてたから(笑)。

歌舞伎町は一番日本的

— 世界中でDJされていますが、歌舞伎町に似ている街はありましたか?

ないよ!(笑)まあ、強いて言えば香港とか上海が近いかなと思うけど。ネオンの色味が多い感じとか、密度がギュッと高い感じとか。でも、それは単純にアジアだからってことかな。そう考えると、歌舞伎町って一番アジア的だよね。「ブレードランナー」のころから引用されてるし。

— アジア的ないかがわしさというか、テンションの高さはありますよね。

そういうのは渋谷にはないし、池袋ともちょっと違うんだよな。使ってる武器が違うっていうか(笑)。

— 確かに、そういう感覚ってヨーロッパにはなさそうですよね。

繁華街のど真ん中にクラブがあるっていうのも、実はヨーロッパだと珍しいから。ちょっと郊外の空きビルみたいな場所でパーティーやってることが多くて。
香港もそうだけど、土地がないからさ。どんどんビルを高くして上に積んでいくじゃない。そうすると密度も高くなるし、空が見えなくなってぎゅっと詰まった感じになって、見回すと色味と音が溢れてる。それが醸し出す感じってヨーロッパには絶対ないよね。すごく日本的だと思う。

— 最後に、今卓球さんがハマっているものをお聞きできますか?

犬ですね。いまは生活の中心が犬だから。夜中の仕事が多かったんだけど、幸い今は仕事もあんまりないんで、もう早寝早起きがすごい。年齢的なこともあるんだろうけど、夜は9時に寝て、朝4時に起きてる。老人だよね(笑)。まだ暗いからベッドでじっと日が出るのを待って、明るくなったら犬の散歩に行くっていう本当に健康な生活ですよ。歌舞伎町みたいな感じとは真逆(笑)。

石野卓球(いしのたっきゅう)

1989年にピエール瀧らと“電気グルーヴ”を結成。1995年には初のソロアルバム『DOVE LOVES DUB』をリリース、この頃から本格的にDJとしての活動もスタートする。1997年からはヨーロッパを中心とした海外での活動も積極的に行い始め、1998年にはベルリンで行われる世界最大のテクノ・フェスティバル“Love Parade”のFinal Gatheringで150万人の前でプレイした。1999年から2013年までは1万人以上を集める日本最大の大型屋内レイヴ“WIRE”を主宰し、精力的に海外のDJ/アーティストを日本に紹介している。2012年7月には1999年より2011年までにWIRE COMPILATIONに提供した楽曲を集めたDisc1と未発表音源などをコンパイルしたDisc2との2枚組『WIRE TRAX 1999-2012』をリリース。2015年12月には、New Orderのニュー・アルバム『Music Complete』からのシングルカット曲『Tutti Frutti』のリミックスを日本人で唯一担当した。そして2016年8月、前作から6年振りとなるソロアルバム『LUNATIQUE』、12月にはリミックスアルバム『EUQITANUL』をリリース。
2017年12月27日に1年4カ月ぶりの最新ソロアルバム『ACID TEKNO DISKO BEATz』をリリースし、2018年1月24日にはこれまでのソロワークを8枚組にまとめた『Takkyu Ishino Works 1983~2017』リリース。現在、DJ/プロデューサー、リミキサーとして多彩な活動をおこなっている。

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CONNECT歌舞伎町2022

開催日 :2022年4月29日(金・祝)
開場  :12時
開演  :13時~22時 ※タイムテーブルは後日発表
会場  :新宿BLAZE / 新宿LOFT / MARZ / Marble /Zirco Tokyo / shinjuku SAMURAI
主催  :コネクト歌舞伎町実行委員会 / 歌舞伎町商店街振興組合

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前売りチケット
◇前売り券  4800円
◇当日券   5500円 ※フェスティバル当日に指定の窓口で販売。詳細は後日発表。
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※新型コロナウイルス感染症拡大防止対策については、本フェス開催の1ヶ月前に、その時節に適用されているガイドラインに準じた対策を発表します。

【Interview】Vol.36「バイブスと言うより、カルマ。ミクスチャーではなく、混沌。それが歌舞伎町」 石野卓球インタビュー

text:張江浩司
photo:白井晴幸

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