みのミュージック注目アーティスト Vol.08 バンドサウンドとBento Waveを融合させる「ペペッターズ」

文:照沼健太
2022.06.13

音楽紹介を行う人気YouTubeチャンネル「みのミュージック」を運営するYouTuberであり、新宿歌舞伎町でレコードBAR「烏龍倶楽部」 を経営する「みの」さん。会員に限らず音楽と酒を自由に楽しめるバーとして再始動した烏龍倶楽部で、みのさんが今注目しているアーティストを紹介してもらう連載第8回。今月のアーティストは「ペペッターズ」です。

音楽シーンの新潮流「Bento Wave」

【MV】ペペッターズ – jezero / pepetterz

— 今回紹介いただくペペッターズはどんなアーティストでしょうか?

関西中心に活動しているバンドです。元々スリーピースだったんですけど、今は二人組ですね。サウンド的にはペトロールズを思わせる、いい感じに抜け感があるストレンジなロックです。

ペトロールズ – 雨 @ ONE PARK FESTIVAL 2021

僕は「レガートでもう一度」という曲で彼らペペッターズを知ったんですけど、Bento Wave的なアプローチがあって、すごく新しさを感じたんですよね。

— Bento Waveとは、最近みのさんが提唱されている音楽ジャンルですよね。

そうです。具体的には、長谷川白紙、浦上想起、諭吉佳作/men、ぷにぷに電機、Serphなどのアーティストがそこに含まれていて、簡単に言えば「たくさんの具材で構成された幕の内弁当のように、たくさんの素材をコラージュ的に構成したサウンドが特徴的な音楽ジャンル」です。

長谷川白紙 – ユニ (Official Audio)

— もう少し掘り下げると、Bento Waveには具体的にどんな要素がありますか?

カットアップ的なぶつ切り感がある情報量の多いアレンジ、ドラムンベース的な印象さえある手数の多いドラム、DTM的なアンサンブル、豊かなメロディーセンスなんかが特徴だと思います。

— 「インターネット世代」的な情報量の多さに起因するジャンルなのでしょうか?

いや、僕個人が考える評論だと、それ以前にもあった傾向なんです。膨大な引用をカットアップする音楽スタイルは90年代の渋谷系にもありましたし、そこから出てきた小山田圭吾さんがコーネリアスとして作った1997年のアルバム「ファンタズマ」はまさにBento Wave的とも言えるサウンドでした。

Cornelius Fantasma Remastered – Unpacking

さらには2000年代のネオ渋谷系アーティストにもそういうサウンドはあったんです。でも、今までそうした音楽に名前が付いていなかったんですよ。ですので、そこに便宜的に名前をつけることで、近い特徴を持ったアーティストたちを一群として浮かび上がらせたいと思ったんです。

— そして、そのBento Wave的なサウンドが今のシーンで盛り上がりを見せている、と。

そうです。音楽シーン全体の中でBento Waveサウンドが影響力を持ってきていると思うんです。長谷川白紙が直球のBento Waveだとしたら、元々Bento Wave的ではないアーティストもそういったサウンドに影響を受けた創作を行うようになってきている。当事者ではなかったはずのアーティストにまでスタイルが波及するようになっているのに、まだジャンル名が付いてない。そこで、おこがましい話があるんですけど名前をつけようと思ったんです。

新しい音楽ジャンルを命名します

バンドサウンドによるBento Waveへの接近を感じる

— Bento Waveについて把握できたところで、ペペッターズのどこに惹かれたのかを改めて伺えますか?

とにかく「レガートでもう一度」という曲ですね。仕事柄たくさんの新曲を聴くんですけど、ここ最近で一番いいなと思いました。

レガートでもう一度

— バンドサウンドではありますが、確かにBento Waveっぽいテイストがありますね。

そうなんです。Bento Waveは基本的にバンドサウンドというよりもDTM的/トラック的なサウンドなんですけど、彼らはバンドサウンドでそれをやっている。ペトロールズ的なファンクネスとBento Waveサウンドの融合を感じますね。

— ペトロールズは彼らペペッターズのインタビューでも言及されていましたね。

そうですよね。そして、ペペッターズのデビューのきっかけは、2018年にリリースされたチャットモンチーのトリビュート盤への参加なんです。一般公募枠に応募して、それが収録されたという。そうした”ロックバンド的”なバックグラウンドを持ちながらも、Bento Waveに接近したというのが、とても今っぽい気がします。

推測でしかないのですが、ドラマーが脱退して2ピースになったことでリズムの部分で大きな変化があって、Bento Waveに接近したのかなと感じています。それまでにリリースしていた他の楽曲も聴きましたが、「レガートでもう一度」は彼らの中でも新基軸なのかなと感じました。ダントツでこの曲にビビッときましたね。

— どういう人にペペッターズをお勧めしたいですか?

ペトロールズみたいな、ちょっとストレンジで抜け感あるファンキーなバンドサウンドが好きな人はハマると思います。それと同時に、長谷川白紙とかぷにぷに電機、SerphのようなBento Waveが好きな人もいけるでしょうし、両者の架け橋になれる存在じゃないかと思います。そして「レガートでもう一度」はメロディーもポップで聴きやすいので、ちょっとひねったポップスが好きな人にもいいと思いますね。

— 最後に、今後ペペッターズにどんな期待をしているか教えてください。

毎回違うアプローチを見せてくれるアーティストだと思うので、そうした多様なスタイルは維持してほしいですね。でも、いちファンとしてはとにかく「レガートでもう一度」にめちゃめちゃビビッときちゃったんで、そういう路線はもっと聴いてみたいですね。それくらいBento Waveサウンドとバンドサウンドの融合はこれまで全然聴いたことがなかったし、ペペッターズはその先を描く力を今一番持っているアーティストだと思うので、そこに対する期待が強いです。新曲「jezero」もその方向を感じさせてくれたので、今後がとても楽しみです。

ペペッターズ広村康平さんからのコメント

「なぜみのさんが僕たちを?」
という気持ちでひとまずいっぱいになった頭の中にて、
動画ラインナップの多種多様さ、音楽への愛情と造詣の深さ、
たくさんの魅力を再度確認し、光栄に思いながら、
「MOTHERのサントラ、2の方にいたってはLP2枚組も持っています!」とお伝えしたいなと、
漠然と強くそう思いました。
(影響受けすぎて「PAULA」という楽曲を作ったこともあります)

勝手ながら味わわせていただいた、
自分が昔から好きだった音楽を誰かが知っていて、聴いたことがあって、称賛していて、
そういった事実を知った途端無性に嬉しくなる気持ち。

トップノートにこだわったボイシングやライブでは困るであろうアレンジ、
軽めな転調、軽めな変拍子とかにも最近は挑戦しつつ、
それでいてポップなものなんだと認識してもらえる仕上がりをいつも目指している僕たちの作品の中に、
みのさんが無性にワクワクするような楽曲がもしも一つでもあったなら
いちバンドマン、いち音楽好き、いち人間としてとてつもなく嬉しいです。

この度はペペッターズをご推薦いただき本当にありがとうございます。
第8回連載、とても楽しみにしております!

ペペッターズ

神戸にて結成された、自由自在なバンド。オリジナリティーとポピュラリティー、混沌と透明感、その狭間を行き来するサウンド、清涼感のあるボーカルとリスナーの脳髄に直接アクセスするコーラスワーク、そして一度目と耳にすれば虜になってしまう実力派サウンドとライブ力を武器に、全国で粛々と活動中。

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YouTubeチャンネル「みのミュージック」は現在33.3万人登録者を誇り、自身の敬愛するカルチャー紹介を軸としたオンリーワンなチャンネルを運営中。
Apple Musicのラジオプログラム「Tokyo Highway Radio」でホストMCを務めており、今年5月には自身初となる書籍「戦いの音楽史」を発行し活動の場を広げている。

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text&photo:照沼健太

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