【Interview】Vol.26 抜群の相性の良さを誇る、根本宗子とチャラン・ポ・ランタン(小春、もも)。新宿・歌舞伎町での出会いから、新作舞台『Cape jasmine』までを語り尽くす。

文:田中里津子
2021.09.24

劇作家にして演出家、そして個性派役者でもある根本宗子が約1年の充電期間を経て、演劇活動を再開! 時世のことも鑑みながら挑む、実験的な魅力にも満ちた新作舞台『Cape jasmine』は“ミュージカル”ならぬ“ブランニュー(真新しい)・オペレッタ(喜歌劇)”だ。キャストやスタッフも見事なほどにジャンルレスで、新鮮な顔合わせが実現することになった。音楽を担当するのは、根本とのコラボレーションはこれが7回目となるチャラン・ポ・ランタンの小春。そして根本とはふたり芝居で共演しているボーカルのももは今回、出演者として登場することになっている。姉妹揃って、根本とはプライベートでも付き合いが深い間柄だ。

新作の稽古が始まる少し前、集合した3人に出会いの記憶、新作舞台への想いなどを語ってもらった。

根本宗子(左)、チャラン・ポ・ランタンもも(中央)、チャラン・ポ・ランタン小春(右)

0時スタートの謎のお茶会で風変わりなプロモーション活動?

— まず、3人の出会いはいつだったんですか。

根本:ふたりが、私の舞台を観に来てくれたのが最初です。

もも:中野の劇場に観に行きました。

根本:『バー公演じゃないです。』の初演(2016年)で、共通の知人がいたんじゃなかったかな。

もも:なんで根本さんの存在を知ったんだっけ。誰かから、根本宗子さんというおかしな……いや、面白い人がいると噂を聞いたんです。

根本:おかしな、って(笑)。

小春:その発言、証拠に残ったよ(笑)。

もも:ヤバイ(笑)。ちょうどタイミングも合うから、観に行こうということになって。

小春:あれ? ももは中野で観たのが最初なの? 私が最初に観たのは、変な妖精みたいなのが出て来る音楽劇だったよ。

根本:えっ、小春ちゃん、あれを観てるの? 妖精ってことは『ファンファーレサーカス』(2016年)でしょ?

小春:うん。そう。

根本:ああ、だから私の舞台を初めて観た時に「小春が音楽をつけたほうがいいと思った」って言ってたんだ。あの作品は私にとって初めての音楽劇で。そうだ、まさに会場は歌舞伎町の新宿FACEでした。

小春:私、自分でチケット買った気がする。ひとりで行ったもん。

根本:そう、終演後にも会ってない。もし会ってたら、絶対覚えてる。でも、そのすぐ後で、小春ちゃんはあまり覚えてないそうですけど(笑)、深夜にお茶に誘い出してくれたことがあって。

小春:深夜だった? それは怖いね(笑)。

根本:0時スタートだったよ。今だったら考えられないよね。

小春:コワッ。

もも:コワッ(笑)。

根本:「小春は夜中にいつもこの店にいるから」みたいなことを言われて。

小春:怖い!

もも:怖い!!(笑)

小春:どういう会なの? 初めて会うのに深夜って。

根本:よく行っている店がたまたま一緒だったんですよ。それで「そこ、私もよく行きます」って言ったら「小春は大体夜中にいるから」って言われて。それで会いに行ったら、チャラン・ポ・ランタンのCDをたくさんくれて「舞台の音楽、私が作ったほうが合うと思う」って話をされたんです(笑)。

小春:アハハ。そのプロモーションの仕方、めちゃ怖くない?

根本:でもそうやって、私の作品に「曲を作るよ!」ってわざわざ言ってきてくれたわけで。

— それは、純粋にうれしかったのでは?

根本:はい。私は普通に、チャラン・ポ・ランタンのファンだったので。でも実際にご一緒することになったのは、そこから2年くらい経ってからでしたね。『愛犬ポリーの死、そして家族の話』(2018年)の時に、初めて音楽を書いていただいて。でも、あそこがベストタイミングだったと思うよ、きっとお茶した直後あたりではお互いにかなりトガってたので。もし実現したとしても、その1作で終わっちゃってたかもしれない。

小春:そのあと、一生会わなかったかもね。

根本:『ポリー~』の時は本当に、小春ちゃんの音楽にめちゃくちゃ助けてもらったんですよ。

— 歌が重要な芝居でしたものね。

根本:最初に、歌で主人公の人生を説明していくみたいなこと、それまでやったことがなかったので。あの作品から数えたら、今回の『Cape Jasmine』で小春ちゃんとご一緒するのは7作目になるんです。

小春:すごいよね。劇中音楽のCDがボックスで出せるくらいだよ。

もも:え、もう7作目なの? マジで?

根本:さっき別の取材で撮ってもらったのが、小春ちゃんとの初めてのツーショットだという。それなのに、これまで1回もふたり一緒には取材されてなかった。

小春:この関係性に、誰も興味なかったんだよ(笑)。

— いい記念になりましたね(笑)。ももさんとは『Cape jasmine』が2作目なんですね。

もも:はい、そうです。

根本:でも姉妹で同じような感じでしたよ。小春ちゃんは「小春が音楽を作ったほうがいい」って言ってくれて、ももちゃんからは「なんで、ももは呼ばれないの?」ってよく言われてた。

もも:そうそうそう。初めて根本さんの舞台を観た時にめちゃめちゃ面白くて「私も出たい!」と思ってたし、「いつか出る!」ってツイートもしていたし。

小春:確かに新宿のロフトプラスワンのトークイベントにこの3人で出た時にはまだ、ももは根本さんの作品には呼ばれていなかったんだよね。

根本:小春ちゃんと『ポリー~』をやる、というタイミングでのイベントで、チャラン・ポ・ランタンさんとして一緒にももちゃんにも来てもらってたので。

もも:そうだっけ?

根本:そのあとで、『超、Maria』(2020年)をやることになったんだよ。

もも:じゃあ、ももと根本さんはそのころはまだあまり仲良くなかったの?

根本:最初はそうだね(笑)。

もも:私、その当時の記憶があまりなくて。すっかり、だいぶ前からの仲良しのつもりだった。

小春:いやいや、この3人の中ではひとりしかちゃんとしたことを覚えてないから。

根本:うん、私しかいろいろ覚えてない。ということは、私が嘘ついてる可能性もあるけどね(笑)。

小春:アハハハ! 過去の関係、いろいろ勝手に塗り替えられてたりしてね(笑)。

小春とももにとっても根本との前作は、記憶に残る大事な舞台

— そしてこの秋に幕を開ける根本さんの新作舞台、ブランニュー・オペレッタ『Cape jasmine』では音楽を小春さんが手がけ、ももさんは出演者のひとりとして参加されることになっています。今回、おふたりにこの形でオファーをした、いきさつは?

根本:私、このコロナ禍もあって1年間も演劇の公演をお休みしていたんです。それで復帰作となる今回は、ぜひ音楽を使ったものをやりたいと考えていまして。それで小春ちゃんが音楽を引き受けてくれるのならこういう作品をやりたいんだけど、と相談したんだよね。

小春:うん。

根本:ぼんやりと「こんな企画があるんですけど」と話して。そうしたら「ふうん」って(笑)。

小春:「ふうん」、でしたね。

根本:何しろこのご時世で、どんな企画だろうと先のことはまったくわからない状態でしたから。「やれたらいいねえ」「実現したらいいねえ」みたいな話になりますよ。

小春:うん、そう。こっちも、ここ2年くらいは、意気込んでいたものが簡単にバラシになったりしていたから。そうなると、とにかく最初から意気込むのはやめておこうかな?って思っちゃったんですよ。

根本:わかるわかる。それで、ももちゃんにも出てほしいというお話をして。前回は私とのふたり芝居だったので、今回はそれなりの人数のキャストの中にももちゃんがいるという状況で一緒にやってみたかったんです。

— ももさんは今回の舞台にお誘いされて、どう思われましたか。

もも:うれしかったです。とにかく私としては前回の『超、Maria』が、超楽し過ぎたし、そのあとの配信バージョン『超、Maria』もやっぱり超楽しかった。

小春:よく考えたら我々も、コロナというものに影響を受けずに客席に100%入れられた最後の作品が、『超、Maria』だったんですよ。だからなんだか最後の思い出みたいに記憶に残る、とても大事な舞台になっちゃったの。

根本:いろんな思い入れがあるよね。だってあれ、客席に降りて芝居したりしていたじゃない。もはや今じゃ、考えられないけど。それに私、そういえばあれ以来、人前で芝居をしていないのよ。

小春:そっか!

根本:もしかしたら、もう何も出来なくなっている可能性あるよ。本番になって「うわー、人がいっぱいいるー」ってパニクって、全部忘れちゃったりして(笑)。

もも:アハハハ! それ、ヤバイって!(笑)。

— そして今回は2週間の稽古で仕上げるということも話題です。自信のほどはいかがですか?

根本:そういう前提で台本も書いているので、大丈夫でしょう。結局は、やっている我々が楽しそうというか、イキイキしていないとダメだと思うんですよね。それは別に私たちだけが楽しもうとしているわけじゃなくて。だけど今はとにかく辛い思いをしながら、怒られたりするような稽古はやりたくないので(笑)。

小春:そんな稽古場は、私だってイヤです(笑)。

根本:ともかく、いつもより楽しい稽古になるといいな。って、まあ、いつも私たちの稽古は楽しいんですけどね(笑)。

— 女性ばかりのキャスティングですが、どんな座組になりそうですか。

根本:ももちゃんがいればいつも明るいし、みんなと仲良くしてくれるし。

— ムードメーカーなんですか?

もも:そうなの?

根本:じゃないんですか?(笑) ま、この3人の中で誰が?となれば当然「ももちゃん」って答えますけども。

もも:それはそう。小春ちゃんでないことは確か。

小春:いやいや(笑)。

もも:でも今回、ホントにいろいろなタイプの人がいるから、楽しみ。

根本:最年少ではない座組というのも珍しいんじゃない?

もも:うん。

小春:というか、ももはまだそれほど舞台をいっぱいやっているわけじゃないから。

もも:うん。舞台経験は、ひとり芝居(『あのさ、生まれ変わったら』2017年)と、根本さんとのふたり芝居の『超、Maria』だけだから。

小春:ほら。だから他と比べることもなく毎回新鮮な経験をしているのよ、「ひとり芝居だ、新しい~!」「ふたり芝居だ、新しい~!」って。

もも:ひとりからふたりになって、今回は一気に6人に増えたな、みたいな。

小春:どんどん増えるから、次は20人とかになるのかも。

根本:役者の場合、普通は逆だからね。最初にいきなり、ひとり芝居という人はなかなかいないと思う。

小春:もともとが歌い手なもんだから、たぶんこの増やし方のほうがもものスタイルには合ってたんだよ。

根本:あ、そうか!

小春:ステージでも、バンドが後ろにはいたものの歌うのはひとりだったし。私がちょっとコーラスに参加するくらいだから、自分のテンションのみ、自分のタイミングのみでいけてたし。

もも:ひとりには、慣れてたね。

小春:もしかしたら最初に20人共演者がいたほうが、「めっちゃ、いつもと違う!」って困惑していたかも。

根本:だけど今回の座組、私の芝居に出たことがある人はももちゃんしかいないんだよ。

小春:それ、ヤバイんじゃない?(笑)

もも:アハハ、どうしよう。既に言えない台詞があって……(その場で台詞を言ってみる)。

小春:全然、言えてないから(笑)。ももの台詞の時だけちょっと、似た声で滑舌が良い私が後ろから言おうか。

根本:その手、使えるかもしれない(笑)。

今回の新作も“自分が一番観たいもの”を目指します

— ちなみに、この3人での歌舞伎町に関する思い出ってありますか?

小春:やっぱり最初に根本さんの舞台を観た新宿FACEでの思い出になるかな。

根本:でもあの時、ももちゃんはいなかったもんね。

もも:いない。

根本:新宿に、あまり3人では行かないかも。あ、でも歌舞伎町といえば、それこそロフトプラスワンでやったトークイベントがあるじゃない。あのイベントの流れで『超、Maria』がやれて、それが今につながってくるわけなので。あの時、すごく覚えているのが「まず、小春ちゃんが曲を書くじゃん。そうしたら次、ももが出るじゃん。それから、みんなでやるじゃん!」みたいな大まかな希望の予定をももちゃんが言ってたこと。だけど『超、Maria』はすごく不思議な感じだったな。チャラン・ポ・ランタンの、いつものメンバーの中に私がひとり入っていたような状態だったから。私のほうがアウェーでしたね。自分の芝居なのに(笑)。

小春:確かに、そうだったかもしれないね(笑)。

— では最後に、お客様へ向けてメッセージをいただけますか。

もも:ハイ、ではワタクシから。

根本:?

小春:?

もも:なに、ビックリしてんの。

小春:いや、いきなり何を話すのかなって。

もも:とにかく私は今、根本さんの作品に出られる喜びが強いので。私自身がたくさん楽しんで、みなさんにも元気になってもらいたいです。楽しみたいと思います、本当にワクワクしています、以上!(笑)。

小春:私はふだん、チャラン・ポ・ランタンの楽曲を作ることが一番多いですし、他のミュージシャンに書く曲の場合でも少なくとも20回くらいは歌ってもらえるというか、長く歌われることが前提みたいなところがあって。でも劇中音楽の場合は、その公演以外では歌われないものじゃないですか。『超、Maria』の曲を今回の舞台でまた使うのも変な感じですもんね。それが私たちにとっては新鮮ではあって。すごく貴重な経験をさせてもらっているなと思っているんです。ひとつの作品の中のみで消えていく音楽。その作品だけのものだというのは、ホント劇中音楽ならではだと思っていて。そうやって大事にこれまで7作品分の曲を作ってきましたが、自分でもわりといい曲だったなと思う曲が結構あるんですよ。そうなると曲数が増えれば増える分、次の曲へのハードルは上がるんですよね、なんてことも思いながら……えっと、今回もお楽しみに!(笑)

もも:いきなり終わった!

小春:なんかね(笑)。でも今回はまた全然違う出演者が揃うので、全然違う楽曲が出来ると思います。

根本:本当に今、小春ちゃんが言っていたみたいに、舞台作品にオリジナルの楽曲を作ってもらえるなんてことがそもそもはとても贅沢な話で。いまやお客さん的にも当たり前のタッグに思えるでしょうけど、そもそも全曲書き下ろしなんてとてつもなく贅沢なんだということを、ちょっと立ち返って考えたほうがいいと思うのよ(笑)。今回の公演もキャストの顔ぶれを筆頭に、とにかく要素が多過ぎてどこを観ていいのか、ピックアップするポイントが絞れなくてみなさんも大変でしょうけど。私自身も今回は、初日をやってみないことにはこの作品が結果的にどういうものになるか、わからないんです。もちろん、プランやビジョンはありますけどね。とにかく私も観たことがないもの、私が一番客席で観たいものを毎回作っているつもりなんですよ。やりながら「客席の人いいなあ!」っていつも思っているので、今回もまたそこを目指したい。あと、特に今回は再演に耐えうる演目にしていきたいんです。今後10年くらい毎年『Cape jasmine』のオーディションをやってる、みたいな状況になるといいな。

小春:ヤバイ、それ。いいじゃん! 毎年、いろんな種類の人を呼べるね。

もも:うんうん、面白そう!

根本:この1回で、終わらせたくないんです。

— そうなれば楽曲たちも今回だけで消えるのではなく、また聴ける日がやってきますね。

小春:うんうんうん!

もも:楽しみだね、本当に! いやあ、やっぱり、このふたり(小春、根本)の組み合わせは絶妙なんですよ!!

根本:その話題、もうちょっと早い時間から話し始めておいてほしかったな!

小春:アハハハ!

もも:そっか。でもホント、観てもらったら絶対わかると思う。この絶妙な組み合わせを、ぜひ観に来てくださいね!

根本宗子(ねもと しゅうこ)

1989年10月16日生まれ。東京都出身。19歳で劇団・月刊「根本宗子」を旗揚げ、すべての作・演出を手がける。俳優として外部作品にも多数出演する他、『オールナイトニッポン0』など、ラジオパーソナリティとしても活躍。2020年4月には、完全リモート稽古、ワンカット収録での作品『超、リモートねもしゅー』を配信。さらにTOHO MUSICAL LAB.『Happily Ever After』の脚本・演出を手がけたほか、自身のnote内でwebマガジン『ほまれ』を発表するなど、コロナ禍においても精力的に活動を続けている。月刊「根本宗子」『もっとも多いなる愛へ』以来、1年間の演劇活動の休止、および充電期間に入っていたが、本作が待望の復活公演となる。

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チャラン・ポ・ランタン

もも(唄/平成生まれの妹)と小春(アコーディオン/昭和生まれの姉)による姉妹ユニット。2009年結成、2014年にシングル『忘れかけてた物語』でメジャーデビュー。バルカン音楽、シャンソンなどをベースに、あらゆるジャンルの音楽を取り入れた無国籍のサウンド、サーカス風の独特な世界観により国内外で人気を博す。2016年発売の配信シングル『進め、たまに逃げても』が、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)のオープニングテーマに起用され、大きな反響を呼ぶ。2020年には『空が晴れたら』を皮切りに、「8週連続“宅録”配信シングルリリース」を敢行。2021年9月に独立し、自分たちで会社を経営しながら、自分たちの世界を今後も大きくしてゆく予定。

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ブランニューオペレッタ『Cape jasmine』

2021年10月6日・7日
日本青年館ホール
作・演出・出演・企画 根本宗子
音楽 小春(チャラン・ポ・ランタン)
演奏 カンカンバルカン楽団
出演 横山由依(AKB48)、中山莉子(私立恵比寿中学)、江上敬子(ニッチェ)、あっこゴリラ、もも(チャラン・ポ・ランタン)
踊り riko
料金 S席8,800円、A席7,500円
問い合わせ 0570-550-799(キョードー東京、平日11:00~18:00/土日祝10:00~18:00)

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【Interview】Vol.26 抜群の相性の良さを誇る、根本宗子とチャラン・ポ・ランタン(小春、もも)。新宿・歌舞伎町での出会いから、新作舞台『Cape jasmine』までを語り尽くす。

photo:福岡諒祠
text:田中里津子
edit:野上瑠美子

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